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小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」

新型コロナ・V字回復プロジェクト…全国民が定期的に感染状況を検査で確認できる体制が重要

文=小黒一正/法政大学教授
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 しかし、通常の経済活動を再開するとき、我々がお互いの感染の有無について判別ができていたら、状況は劇的に変わってくる。感染症対策と経済学の視点を融合させず、「検査」をたんに感染症対策の一環として観点から、感染の有無のみに利用するのは視野が狭い。検査で陽性反応が出た者の「隔離」は当然だが、経済政策の視点も取り込み、継続的な「陰性者」を徐々に自由な経済活動を戻す「出口戦略」の立案やその環境整備が極めても重要だ。

 もっとも、偽陽性の問題などがあるため、ウェブ提言では「偽陽性・偽陰性の問題は、複数検査で対応」と記載している。詳細はウェブ提言の「Q&A」に掲載したエクセル・ファイルを利用して確認してもらいたいが、例えば「感染率=1%かつ特異度99.9%」の場合、連続2回検査陽性を「陽性」と定義すると、東京都の人口(1395万人)でも偽陽性は14人になる(検査の独立性が前提)。また、同じ条件で、連続3回検査陽性を「陽性」と定義するならば、東京都の人口(1395万人)でも偽陽性は0人になり、陽性判定は100%になる。

 このほか、1)偽陰性の問題に対処するため、例えば陰性の判断は連続2回検査を行って連続2回陰性のときに「陰性」とすること(この場合、「陰性」以外は「陽性」判定となるが、当然、再検査を容認)や、2)情報の非対称性を解消し、我々がお互いに検査結果(PCR検査や抗原検査)を容易に確認できる環境を整備も重要で、PCR等検査陰性証明書を発行することも考えられる。

 Acemoglu, et al. (2020)の論文や提言も似た問題意識をもっているが、外出制限や自粛といった一律の政策は効率的ではない。官邸を中心に関係省庁、都道府県および協力団体などが一体となり体制整備や分析などを行う「新型コロナウイルス検査緊急対策ネットワーク」(仮称)の構築が提言の前提だが、いま我々は「命」も「経済」も守るものと発想を転換し、産官学の叡智を結集することで、ウイルスを徐々に封じ込めながら、感染リスクや年齢といったグループの特性に応じて、通常の経済活動を取り戻すための戦略を早急に講じる必要があろう。

(文=小黒一正/法政大学教授)

(参考文献)

・鹿島平和研究所・国力研究会/安全保障外交政策研究会+有志(2020)「緊急提言 新型コロナ・V字回復プロジェクト 「全国民に検査」を次なるフェーズの一丁目一番地に」

・Acemoglu, D., Chernozhukov, V., Werning, I., and Whinston, M. (2020) “A multi-risk SIR model with optimally targeted lockdown,” NBER Working Paper No. 27102.

・Allen, D., et al. (2020a) “National Covid-19 Testing Action Plan  Pragmatic steps to  reopen our workplaces and our communities,” Rockefeller Foundation

・Allen, D., et al. (2020b) “Roadmap to Pandemic Resilience,” Safra Center for Ethics, Harvard Univers

・Peto, J., et al.(2020) “Stopping the lockdown and ending the epidemic by universal weekly testing as the exit strategy”

・Romer, P. (2020) “Roadmap to responsibly reopen America”

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