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中曽根陽子の教育最前線

オンライン教育で乗り切った“公立”小学校の挑戦…生徒が、教師が変わった3カ月の記録

文=中曽根陽子/教育ジャーナリスト、マザークエスト代表
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「休校期間中に、最終的に子どもたちが学びの楽しさを取り戻し、先生がいなくても成長できることを実感してもらいたかった」(蓑手先生)

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日々やったことをマイページにアップ 成長記録にもなっていった

環境は揃わなくてもできることを積み重ね、第2波に備える

 次に登壇したのは、教育と社会の垣根をなくすことを目指して吉祥寺で多様な人が集まるコミュニティ「BeYond Labo」を運営するパラレル教師という異名を持つ、練馬区立石神井台小学校の二川先生。コロナによる休校後、コミュニティ活動の一環として、5月に3回、地元の武蔵野市でオンライン朝会を開き、述べ430人もの子供たちが参加した。

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 地元の有志たちと立ち上げたオンライン朝会。Zoomで多くの子どもたちとつながった。一方、4月から異動になった練馬区は、子どもたちへのPC普及率が14人に1台と都内でも遅れていた。それでも、恵まれない環境の中でも今できることをしたいと、着任校にある書画カメラや電子黒板などの材料を活用して、全教室でZoomが使えるようにした。

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恵まれない環境でも、できることを探す(画像出典:文部科学省「2018年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果【速報値】」2019年8月30日教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数(東京都内自治体)リセマム:学校のICT環境、都道府県・市町村ごとの整備状況 (2019.8.30)より)

 そうした行動によって、周りの先生たちの意識も代わり、Zoomを使ってできることを考えるようになったという。

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書画カメラと電子黒板を組み合わせてオンライン研修を実現

「こうした取り組みが、第2波・第3波の備えにもなるし、GIGAスクール構想でハードが整備されたときにすぐに対応できるように、教員のマインドのインフラ整備をしておくことが大切だと思う」(二川先生)

 日本全体でICT教育の普及率は5%という現状で、「できないことを嘆いたり責めたりせずに、自分にできることが何かにフォーカスすること」「自分ができないときには、誰かの手を借りることを恐れないこと」が大切だという。

最初から完璧・公平を目指さなくてもいい。できることから始めれば結果がついてくる

 最後の登壇者がこのイベントの主催者でもある、調布市立多摩川小学校の庄子先生。それまでZoomを使ったことはなかったが、休校措置が長引く中で「子どもたちのためになにもせずにはいられない」という思いから、4月頭から教員間で使い方の研修を始め、5月半ばからZoom朝の会を全学年で実施するようになった。

 ここに至るまでに、校長に提案→教育委員会にプレゼン→実証検証→許可→全学年実施というプロセスがある。公教育でなにか新しいことを始めるためには、こうした段取りを踏むことは欠かせないのだろうが、これでもかなりスピード感があったという。その間には当然「デバイスのない家庭はどうする?」「Wi-fi環境のない家はどうする?」「学校のパソコンは使えるのか」という問題は起きた。しかし、「やってみないとわからない」と踏み切ったところ、6割参加すればいいかと思っていたところ、参加率95%という結果になった。やはり、完全を目指すのではなく、まずやってみること、やりながら考えることが大切だ。

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公平論に陥りがちだが、大事なのはできることからやってみること。それが学びたい子どもの権利を保証することになる。

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