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大田区ベンツ暴走ひき逃げ事件、元売人が明かす覚醒剤のヤバさと「記憶がない」理由

文=後藤豊/フリーライター
大田区ベンツ暴走ひき逃げ事件、元売人が明かす覚醒剤のヤバさと「記憶がない」理由の画像1
「gettyimages」より

 5月20日、東京都大田区の国道1号でひき逃げ事件が起きた。逮捕された中川真理紗容疑者は、品川区の路上で警察官から職務質問を受けているときに乗っていたベンツを急発進、100キロ近いスピードで暴走中に女性をはね飛ばして死亡させ、歩道に突っ込んだ。

 中川容疑者の尿からは覚醒剤の成分が検出されており、「薬を飲み過ぎたことが原因なのかわからないが、衝突するまでの記憶がない」などと供述しているという。

「脳が寝ちゃった。目を開けたまま寝ちゃうの」

「テレビでこの事件を見て、シャブだろうなとは思ってたけど、やっぱりだと感じたわ」

 かつて覚醒剤の売人だったミナミ(44)は、こう話す。覚醒剤使用と譲渡(営利目的)で逮捕されること3回、彼女の刑務所生活は10年以上に及んだ。三度目の“勤め”を終えてから10年がたち、今はトラックドライバーとして真面目に働いている。

「現場近くから注射器が見つかったと報道されていたわよね。おそらくは前夜から使って(効き目が切れて)ヨレてたんだろうなぁ。マエ(前科)があったかどうか知らないけど、逃げないでおとなしく逮捕されていれば(初犯でもあり)執行猶予で済んだだろうにね……」

 ミナミ自身、最初の逮捕は職質がきっかけだった。深夜2時、神奈川県内を大宮ナンバーの車で走行中に職質を受け、運転席の下に隠していた品物(覚醒剤)が見つかり逮捕。所持量が多かったため、初犯で実刑となった。

「私は自分でも使っていたけど、一度パクられてからは、バイ(売買)のときは絶対に打たないし、運転もできる限りしないようにしてた。知り合いのタクシーを呼んで往復してもらったり、昼は電車で移動してたわ」

 中川容疑者が運転していた車は、ベンツの「SL63 AMG 」という超高級車だった。

「ただでさえ目立つわよね。そういえば、私の客筋に同じことをやった子がいたわ。シャブが切れて居眠りした挙げ句、通行人をひいちゃったの。2日ぐらい使ってて、脳が寝ちゃったって。そういうときは、目を開けたまま寝ちゃう。すごく危ない状態よね」

中川容疑者の「記憶がなかった」恐怖の理由

「私は足を洗ったけど、今のブツって混ぜ物が多いのか、昔のようなガッツリした効き目にはならないって言われてる。それこそ、裸で電柱によじ登っちゃう奴とかいたじゃない。川俣軍司(深川通り魔殺人事件の犯人。ブリーフ1枚とランニングシャツで逮捕され、世間を震撼させた)なんかが代表的よね。効き方が強すぎて、とんでもない事件が起きてたでしょ。

 私の知り合いでも、使いすぎて幻覚を見る奴がいたわ。『向かいの団地の奴がカーテンの陰から双眼鏡でずっとこっちを見てるんだ!』と言って、5時間ぐらい見張ってたり。別の男は、高速道路を走り回って『俺、どこに向かってるかわからなーい』。マンションの4階から隣の家のベランダに行った男は『うちに誰か来た。警察だ!』とかね。みんな、やりすぎて寝られず、最後は廃人になっちゃう」

 中川容疑者は猛スピードの車で人をひいて歩道に激突したにもかかわらず、逮捕時に「記憶がない」と語っていたが、いったいどんな状況だったのか、ミナミに想像してもらった。

「切れ目でヨレて、眠剤(睡眠薬)と一緒に使ってたのかもしれない。シャブでヨレたりボケたりしてるときって、実はちゃんと覚えてるんだ。でも、ほかの薬物と一緒に使うと、記憶がなくなるの。最初の頃の私がそうだった」

 最後に、ミナミはこう締めてくれた。

「シャブ中は、いつか必ず痛い目に遭うわ。私は超のつく大金を一瞬ですべて失い、神様が『やり直せ』と言っていると受け止めたの。少なくとも人間は、他人に迷惑をかけないようにして生きないとダメ。(中川容疑者は)遅かれ早かれ大失敗した。これは間違いないわ」

 二度と、このような事件が起きないことを願うばかりだ。

(文=後藤豊/フリーライター)

後藤豊/ライター兼タクシードライバー

後藤豊/ライター兼タクシードライバー

1966年千葉県生まれ。東京都内の中小会社でタクシードライバーを兼務するライター。競馬と野球をメインに、雑誌や書籍で執筆をしている。主な著書に『テイエムオペラオー伝説』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(ともに星海社、共著)などがある。

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