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梅原淳「たかが鉄道、されど鉄道」

鉄道、なぜ機関車は引張力の50倍の重さの列車を動かせる?鉄道、隆盛の秘密はレール?

文=梅原淳/鉄道ジャーナリスト
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 ちなみに、271.8キロニュートンというEH200形の引張力を使い切る場所は存在する。上り坂だ。20パーミルの上りこう配と言って、水平に1000m進んだら標高が20m高くなる坂道で、合わせて1514.4トンの列車に生じるこう配抵抗は297キロニュートンで、EH200形の引張力を超えてしまう。このような場合、上り坂が1km程度の短い距離であればモーターに無理をさせて上りきってしまうし、長々と続く場合は牽引する貨車の重さを減らして対処している。

鉄道はなぜ誕生したのか

 それでは、鉄道はなぜ誕生したのかに話を進めよう。レールの上を走る鉄道の原型は、馬が鉄の車輪付きの馬車を引く馬車鉄道、それから炭鉱内で使われていた手押しのトロッコ鉄道だと考えられている。どちらも18世紀後半にイギリスで起きた産業革命で必要に迫られて誕生した。

 馬車にしてもトロッコにしても産業革命よりもはるか前から存在している。しかし、木の車輪の外側に鉄の輪をはめた車輪で舗装されていない道を走らせるのは大変だ。何しろ走行抵抗が大きいので、一度に運べる量は少ないし、スピードも出せない。

「ゴムタイヤの車輪を採用すればよいのでは」と考えたくなる。実はゴムタイヤが実用化されたのは1867年で、しかも最初は単にゴムを木の車輪の外側に張り付けただけであった。今日見られる空気入りのゴムタイヤが普及したのは20世紀に入ってからである。

 これに対し、馬車鉄道やレールを走るトロッコは蒸気機関車の発明によっていち早く進化を遂げ、1825年にはイギリスで世界初の鉄道が誕生した。蒸気機関車はもともと出力が小さく、創生期であればなおさらであろう。当時の蒸気機関車の出力はEH200形の半分どころか100kWに達していたかどうかも疑わしい。にもかかわらず、実用的な交通機関として世界中に普及したのは走行抵抗が少ないというレールの鉄道の特性を最大限に生かしたからだ。

 歴史に“もしも”はないというが、それでも空気入りのゴムタイヤが鉄道よりも先に誕生していたらどうなっていたであろうか。先ほど、鉄道の車両がレールの上を時速20kmで走ったときの走行抵抗は車両1両当たり9.8ニュートンであったことをもう一度思い出していただきたい。同じ条件で舗装された道路を走る自動車の走行抵抗は重さ1トン当たり98ニュートンほどだそうだ。さらに、舗装されていない道を走るときの走行抵抗は重さ1トン当たりなんと784ニュートンほどである。この数値だけでも鉄道の発展は必然であったと理解してもらえるであろうが、さらに続けよう。

レールの上を走る鉄道の特性

 これまた先ほど紹介した出力338kWのトレーラー牽引用のトラクターは基本的には牽引可能な重さが18トンで、トラクター自体の重さが9.2トンなので合わせて27.2トンだ。ということは未舗装路を時速20kmで走らせたときの走行抵抗は21キロニュートンで、同じ速度で走るEH200形よりも6キロニュートン分も上回る。それでいて引くことのできる重さは18トンと1380トンに比べれば1.3パーセントに過ぎない。

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