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時代の寵児だった松井証券の凋落…なぜネット証券のパイオニアは業界トップになれず

文=編集部
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 手数料自由化とデイトレードの隆盛に乗って「1日定額制」「無期限信用取引」など新機軸を次々と編み出し、松井証券はネット証券の先頭を走ってきた。しかし、輝いていたのは2000年代の半ばまで。手数料の値下げ競争で出遅れ、シェアを落とした。

 ネット取引をする顧客の多くはIPO(新規株式公開)銘柄を事前に手に入れるのに血眼になっていた。ところが、松井氏が野村、大和、日興などのIPOの大手独占を批判して挑戦状を叩きつけたため、野村などを怒らせ、IPO銘柄を割り当ててもらえなくなった。それで客離れが進んだ。

SBI証券、楽天証券に大差をつけられる

 手数料の引き下げ競争は、ついに「ゼロ時代」が視野に入ってきた。ライバルのSBI証券や楽天証券は対面営業や法人関連サービスを拡充して収益源の多様化を図ったが、松井証券は株式売買の仲介を重視してきた。

 営業方針の違いが決算に如実に現われた。SBI証券の20年3月期の売上高にあたる営業収益は1244億円、本業の儲けを示す営業利益は421億円。楽天証券の19年12月期の営業収益は560億円、営業利益は112億円。対して、松井証券の20年3月期の営業収益は241億円、営業利益は89億円である。営業収益では楽天証券がSBI証券の半分以下、松井証券は楽天証券の半分以下だ。20年間、先頭を走っていた松井証券は新規参入組に次々と追い越され、現在では大差をつけられた。創業家出身の社長でなければ、とうに社長交代に追い込まれていただろう。

「古いものを捨ててきた自負心がある」。退任する松井氏は、約30年の経営者人生をこう振り返る。新しいものを生み出すには古いものへの決別は不可欠だが、ネット証券という新しいビジネスのトップランナーには結局、なれなかった。

 新しい社長になる和里田氏は「ネット証券の置かれている状況は20年前と大きく変わった。顧客との接点をいかに広げるかが非常に大きな課題だ。独立系だからこそ業界の垣根を越えた提携ができる」と語り、異業種提携に意欲を見せる。

 松井氏は退任後、夢だった絵を描いて暮らすのが楽しみだという。もともとは東京芸術大学志望だったが、芸大出の高校の美術部顧問の先生に、「芸大を出ても絵を描いて生活していくのは難しい」と言われ諦めた。初心忘れ難しなのだろうか。一橋大学では美術部に所属。今でも時間が許せば自宅で絵を描いている。

(文=編集部)

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