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松岡久蔵「空気を読んでる場合じゃない」

小池百合子知事の学歴詐称疑惑を記者会見で追及しない「都庁記者クラブ」の異常さ

文=松岡久蔵/ジャーナリスト
小池百合子知事の学歴詐称疑惑を記者会見で追及しない「都庁記者クラブ」の異常さの画像1
「小池百合子フィシャルサイト」より

小池百合子都知事の学歴詐称疑惑は、カイロ大学長の声明で追及不可能になった」――。

 全国紙政治部記者はこう分析する。石井妙子氏のノンフィクション『女帝 小池百合子』(文藝春秋)が火をつけたこの疑惑だが、卒業証書の原本を小池氏が公の場できちんと提示しないことが最大の焦点となっていた。しかし、大学側が9日に卒業の正当性を証明する声明を出したことで、卒業証書をめぐる争いにほとんど意味がなくなってしまったというわけだ。先の政治部記者はこう話す。

「今回は大学長名で声明が出た上に、エジプト大使館のお墨付きとあっては証書なぞもはやただの紙切れです。大学と小池氏に癒着関係があったとしてもエジプト政府が言えば卒業は卒業ですから。極端な話、小池氏が証書をなくしたと言い、大学に再発行してもらえればそれで済む話です」

 実は小池氏は本来10日に再選出馬の会見を開く予定だったが、12日に延期した大きな理由の一つに、9日に作家の黒木亮氏と弁護士の郷原信郎氏が外国人記者クラブで学歴詐称疑惑について会見を開いたことがあるとされる。

 会場で取材した記者によると、外国メディアがほとんどおらず、盛り上がりに欠けたという。筆者もオンラインで確認したが、質疑応答もトップバッターに中東ニュースをカバーするパンオリエントニュースの記者が小池氏のアラビア語の能力を保証した上で、カイロ大学の声明を読み上げるという小池氏擁護の「質問」をした以外、見どころがあったとはいえない。小池氏はこの9日の会見を海外メディアはおろか、国内主要メディアが取り上げなかったのを確認し、12日に再選出馬の会見を開いた。

 再選出馬会見では、都庁クラブに所属する大手紙やテレビの「小池寄り」の姿勢が際立った。冒頭に幹事社の東京新聞が「国政復帰する気は?」と質問したのに小池氏が「これから出馬しようとする人間に、その質問はどうかと思う」と気色ばんだ以外は、学歴詐称疑惑や金銭スキャンダルなどに関する質問はゼロ。

 唯一、フリーランスの畠山理仁記者が卒業証書の原本を提示してもらえるかと質問した。小池氏は、「卒業云々については、すでに何度もカイロ大学は認めているということを申し上げて参りました。今日も一部のメディアで原本そのものをかつてそれをのせて掲載している。カイロ大学からも認めてもらっているものと考えている。それによってすでに公表をしているということでございます。そのような必要な条件を検討しながら進めていきたい」と明らかに緊張しており、しどろもどろで意味不明な返答をした。畠山記者がさらに質問しようとすると「お一人一問でお願いいたします」とあからさまに打ち切った。その時の様子を会見に参加した雑誌記者はこう話す。

「一人一問だと司会も言ってないのに、畠山さんの質問をこわばった形相で打ち切りました。実は、畠山さんが指されたかどうか怪しくて、背後に座っていた小池氏にべったりのフジテレビを当てようとしていたんじゃないかとの指摘も出ています(笑)。実際、畠山氏の直後に小池氏がすがるようにフジテレビを指名し、『これまでの4年間の都政を一言や四文字熟語で表すと?』という平和な質問に答えていました。もともと予定調和で質問してくれと頼んでいたようにしか思えませんでした」

 この記者によると、会場には夕刊紙記者やフリーランスもおり、自由に参加を認められたという。ただ、小池氏が質問者を指名する以上、不利な質問をしそうな記者よりも、普段からなじみがあり「再選間違いなしの小池氏」に逆らわない都庁クラブメディアの記者を当てるのは当然の流れだ。

知る権利を侵害する記者クラブ

 冒頭の全国紙政治部記者の言う通り、確かに学歴詐称疑惑を追及することは、もはや不可能に近くなったのは間違いない。ただ、卒業証書も堂々と示せない人間が、首都大学東京をはじめとする教育行政のトップに君臨するのは、「嘘でごまかして出世しなさい」という悪いジョークとしかいいようがない。そこに少しでも異を唱えないのは、黙認していると言われても仕方ないだろう。

 安倍晋三首相や菅義偉官房長官会見と同様、日本の記者クラブの予定調和っぷりは海外メディアでも笑い種になっている。事前通告しかり、好意的な記者しか質問指名されないことしかり。「週刊文春」(文藝春秋)をはじめとする雑誌やフリーランスに「権力者から嫌われる汚れ仕事」を押し付け、後追いすることが常態化した今、記者クラブの存在意義はもはやない。

 東京新聞の望月衣塑子記者は菅長官に空気を読まない質問をすることで有名だが、「彼女も政治部ではなく社会部の所属で、官邸クラブの常駐記者でないから暴れられる」(官邸クラブ所属記者)という理由もある。逆にいえば、それぞれの記者クラブというムラがなくなれば、かなり自由な質問ができるということだ。

 小池氏を作り上げたのが、オッサン中心の記者クラブメディアだったという点も石井氏の『女帝』で指摘されているが、読者の知る権利を侵害する記者クラブ解体の議論はもっと盛り上がっていいだろう。

(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)

松岡久蔵/ジャーナリスト

松岡久蔵/ジャーナリスト

 記者クラブ問題や防衛、航空、自動車などを幅広くカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや⽂春オンライン、東洋経済オンラインなどにも寄稿している。
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Twitter:@kyuzo_matsuoka

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