「販売を重視し、ライセンスビジネスでない方向に軸足を置く」。14年5月、信太郎はアナリスト向けの決算説明会でこう宣言した。市場関係者は信太郎の発言に首をかしげた。ドル箱に育ったライセンスビジネスから、元のグッズ販売会社に戻るという“先祖返り”だったからである。信太郎の方針で物販が強化され、ライセンスビジネスは後方に追いやられた。16年6月の株主総会で信太郎の孫、朋邦が取締役に昇格し、信太郎は孫を後継者に据えた。

 朋邦は慶應義塾大学卒。17年、ナンバー2の専務になった。母親の辻友子が取締役として朋邦を補佐する体制は今後も続くのか。

 信太郎の路線変更は完全に失敗した。営業利益は210億円をピークに下がり続け、20年3月期には21億円に急降下した。期中の営業利益の見通しは40億円だったから、最終的に半減したことになる。

 朋邦はハローキティをハリウッドで映画化する構想を持っている。米ワーナー・ブラザーズによって全世界に配給する計画だったが、「コロナ禍で実現は不透明になった」(関係者)といわれている。実写になるのかCGアニメーションになるのかも明らかになっていない。映画のヒットをテコに、関連グッズの販売にドライブを掛けたいと朋邦は考えているのだろう。

 信太郎は長男の邦彦を失ったことで、すべてが狂った。路線転換に失敗したにもかかわらず、サンリオを辻一族の会社として継続させることに執念を燃やした。そして、朋邦が社長に就任する。社長を取締役の母親が補佐する体制が社会に開かれた会社といえるのだろうか。朋邦を強力に支える経営体制が構築できるとは思えない。

(文=有森隆/ジャーナリスト、一部敬称略)

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