ジョイフル、大量閉店は新型コロナのせいだけじゃない…「他社より3割安い」崩壊で業績悪化

ジョイフルの店舗(「Wikipedia」より)

 外食店は新型コロナの影響で厳しい状況が続いている。日本フードサービス協会の調査では、3月の外食売上高(全店ベース)が17.3%減、4月が39.6%減と大きく落ち込んでいる。ジョイフルも同様に落ち込んだかたちだ。

 もっとも、ジョイフルは新型コロナ前から業績が悪化していた。既存店売上高は今年1月と2月こそ前年を上回ったものの、それ以前はマイナス傾向が続いていた。2019年7~12月は前年同期比3.2%減、19年6月期は2.0%減となっている。

 現在開示されている直近決算の19年7~12月期は、連結売上高が前年同期比2.6%減の363億円、連結営業利益が52.8%減の4億9400万円だった。減収営業減益と厳しい内容だった。

 ジョイフルは低価格を武器に成長を果たしてきた。出店戦略は地方の小商圏立地に集中出店する方式をとっている。これにより物流効率を高められるほか、商圏における知名度を高められたり、広告効率を高めることができる。また、ジョイフルは自社工場を持っている。現在、福岡と熊本、愛知の3県に工場を有し、ハンバーグやソースなどを製造して各店舗に配送している。こうした戦略により、低価格を実現してきた。同社はジョイフルを中心に出店を重ね、5月17日時点で767 店を展開するまで成長した。

 ジョイフルは1976年、大分市に設立した。79年に同市にジョイフル1号店を開いている。その後、店舗網を拡大し、99年にグループで200店、2001年に500店を達成した。この01年は159店もの大量出店を実施している。

 この頃の日本は、デフレ不況に苦しんでいた時だ。日本マクドナルドが00年にハンバーガーを平日限定で半額の65円で提供したりしている。ジョイフルも03年から税込み399円という手ごろな価格の日替わりのランチと、同499円の昼膳の販売を始めている。ワンコインで食べられることを売りにしていた。

ジョイフルのコンセプト「他社より3割安い」が空洞化

 ジョイフルは創業の頃から「他社より3割安い」価格政策を掲げ、安さを追求してきた。04年4月の消費増税の際も、税込み価格を据え置いて実質的な値下げを行っている。この頃のジョイフルの客単価は業界の中でも低い約600円だ。こうした安さを武器に、さらなる成長を実現する考えだった。

 しかし、この頃から景気低迷や競争激化で成長が止まってしまった。店舗数は05年に700店を突破したが、これ以降は新規出店を控えて既存店強化に注力し、立て直しを図っている。07年にドリンクバーを刷新して新たに「Joycafe」として運用を開始したり、メニューを強化したりして集客を試みている。しかし、売り上げは伸び悩んだ。そして08年のリーマン・ショックによる景気低迷により、ジョイフルの業績は悪化するようになった。08年12月期に連結最終損益が赤字に転落した。売上高は07年12月期までは増加傾向にあったが、その後は停滞が続くようになった。

 こうした悪い流れがしばらく続いたが、14年頃から良い流れに変わるようになった。12年12月に発足した安倍晋三内閣による経済政策「アベノミクス」により、緩やかに景気が回復するようになったため、これを追い風にジョイフルは出店攻勢をかけ始めた。それまで店舗数は長らく700店強の横ばいが続いていたが、その後は右肩上がりで増えていった。17年12月期には800店を突破。売上高も長らく600億円前後で推移していたが、店舗数の増加に伴い、売上高も増えていった。800店を突破した17年12月期の売上高は656億円に達している。

 この頃は、一見すると順調のようにも思える。だが、人手不足による人件費上昇などで収益性は悪化した。それまで10億円以上叩き出していた最終利益は、17年12月期は前期比79%減の3億600万円に低下。その後も収益性の低下が続き、19年6月期は49億円の最終赤字を計上している。08年12月期以来の最終赤字だ。また、同期の連結売上高は728億円と高い数値を叩き出しているが、一方で同期の既存店売上高は先述したとおり、前年同期比2%減と落ち込んでいる。業績は厳しい状況にあるのだ。

 ジョイフルの業績が悪化しているのは、なぜか。一番大きい理由は、価格競争力が低下したことだろう。ジョイフルは低価格を武器に成長してきたが、何度か実施した値上げにより、現在はそれほど安いとはいえない状況にある。たとえば、17年10月のメニュー改定の際、全面的に価格改定を行い、平均10%程度の値上げを実施している。こうした値上げで価格帯は上がっており、売りの日替わりランチは現在、税込み504円、昼膳は614円となっている。ワンコインでは食べられなくなっているのだ。

 もっとも、時代は変わっているので、ある程度の価格上昇はやむを得ないし、これでも十分安いといえる。ただ、同程度の安いランチを提供する競合は増えており、ジョイフルだけが安いという状況ではなくなっている。たとえば、ファミレス「ガスト」は現在、税別499円のランチを提供している。ジョイフルと価格は同程度といっていいだろう。ガストは3月末時点で1346店も展開する一大チェーンだ。こうした低価格を売りとする競合が台頭した結果、ジョイフルの価格競争力は相対的に低下したといえる。かつては「他社より3割安い」という言葉に違和感を抱く人は少なくなかったが、今この言葉を使ったら違和感を持つ人が大半ではないか。

 こうして競争力が落ち、収益性が低下している状況のため、ジョイフルは不採算店の閉店を進めることで立て直しを図りたい考えだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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