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日産は財務悪化で研究開発費削減の一方、トヨタは過去最高水準の金額維持…深まる差

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 収益が減少した結果、日産の財務内容は一段と不安定化している。特に、同社の借り入れ依存度が高まっている。リーマンショック後の2009年3月期と2020年3月期を比較すると、日産のDEレシオ(負債資本倍率)は1.4倍から1.6倍に上昇した。日産と対照的に、国内自動車各社のDEレシオは横ばい、ないしは低下している。

 日産の販売台数が減少し、収益力と財務内容の両面において先行きの悪化懸念が高まったとの見方から、大手信用格付け業者は日産の信用格付けを引き下げた。当面の資金繰りにめどをつけるために日産は国内大手銀行などに5,000億円程度の融資枠設定を要請した。同社の債務依存度は追加的に高まり、財務内容は一段と不安定化する恐れがある。

自己変革を実現できなかった日産

 突き詰めて考えると、日産は消費者がどのような自動車を求めているかを深く考え、新しい発想の実現に向けて自己変革を目指すことが難しかった。その状況が長く続いたことが、収益力と財務内容の悪化を招いた一因と考えられる。

 1980年代から90年代にかけて、日産は多くの子会社を抱え、非効率な経営を続けた。また、1980年代から日産の国内工場では、資格を持たない従業員が完成車の検査を行い、完成検査員の印鑑を借りて検査が完了していたことが明らかになっている。それは常識では考えられないことだ。その状況下、経営陣が品質の向上や生産プロセスの改善を目指したとしても、生産の現場に指示が徹底されることは難しかったはずだ。その結果、日産は自ら新しい発想を取り入れ、改善を追求する経営風土を醸成することが難しかった。

 バブル崩壊後、同社の経営は急速に悪化し、ルノーに救済を求めざるを得なくなった。ルノーとの資本提携後、日産はゴーン元会長の指揮の下でコストカットを進めた。その上で、ゴーンは、世界シェア拡大を目指す拡張路線を進めた。それは、世界経済の復調と中国などでの自動車需要の増加という波に乗り、一時的に一定の成果を収めた。

 問題は、ゴーンが拡張路線を追求し続けたことだ。リーマンショック後、ゴーンは新興国でのシェア拡大を追求して「ダットサン」ブランドを立ち上げるなど、固定費がかさんだ。その一方、米国市場で日産は新型モデルの投入が遅れ、人気が低下した。日産は米国での販売台数を増やすために値引きを強化せざるを得ないという悪循環に陥った。その上に日産は販売台数の3割程度を占める中国経済の減速にも直面し、過剰生産能力が深刻化した。ゴーンが進めたことは、新しい発想を用いて付加価値の高い自動車を生み出す、あるいは、自助努力によって原価低減を実現するという自己変革とは異なる。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大によって世界全体で自動車需要が低迷し、日産の経営体力は急速に低下している。

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