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日産は財務悪化で研究開発費削減の一方、トヨタは過去最高水準の金額維持…深まる差

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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経営陣のリーダーシップへの不安

 ゴーンの不正支出が発覚して以降、同社経営陣はリーダーシップを発揮できていない。1月には、新しい経営体制が発足してすぐに副COOが退社した。経営陣をはじめ組織全体がぎくしゃくしたまま日産が改革を進め、着実に収益を出す体制を整えられるかは不透明だ。

 実質的な日産の親会社であるルノーでもゴーンの拡大路線が裏目に出た。その結果、昨年の同社の決算は10年ぶりの赤字だった。ルノーは収益力と財務内容の立て直しを優先しなければならず、日産との経営統合は棚上げせざるを得ない。今後、ルノー、日産、三菱自動車はソフトアライアンスの下で各社の生産設備の相互利用を進め、固定費の削減と収益率の改善に取り組む。

 ただ、その取り組みが日産の収益力と財務内容の改善に十分な効果を発揮するとは考えづらい。日産は固定費削減の一環として研究開発費を削減する。その一方で、トヨタ自動車はリーマンショック時に研究開発費を削減してしまったことへの反省から過去最高の研究開発水準を維持する。世界各国で自動運転やEV(電気自動車)の開発が進み、自動車が動くITデバイスとしての性格を強めている。そうした変化に日産がどう対応できるか不安が残る。また、日産が2割の生産能力を削減したとしても過剰生産能力は残る可能性が高い。さらなるコスト削減が不可避となる展開は排除できない。

 日産経営陣が相当の覚悟を持って改革を進めようとしているか否かも軽視できないポイントだ。今回の決算において、日産は業績見通しを公表しなかった。先行きが見通せない中で構造改革が進むことに関して、多くの従業員が不安を感じ、士気は一段と低下するだろう。日産の内田社長は構造改革の目標が日産の強みに集中し着実な成長を実現することにあると表明したが、その発言が従業員に勇気を与えるとは考えづらい。

 コロナショックによって、世界各国で所得・雇用環境は悪化している。自動車を筆頭に、耐久消費財の購入を先送りする家計は増える可能性が高い。日産の収益力・財務内容が追加的に悪化するリスクは軽視できない。当面、日産はいばらの道を歩むことになりそうだ。

(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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