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東証1部上場企業で異例の事態…監査等委員が2つの強権発動、弁護士の見解は?

文=伊藤歩/金融ジャーナリスト
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 監査等委員会の制度が新設された2014年の会社法改正で監査等委員会にも同様の権限が付与されたが、このときも法制審の検討対象にはならなかった。世の監査役や監査等委員がこの条項を使って強権を発動する可能性は限りなくゼロに近いことは、歴史が証明している。ゆえに、誰も注目せず、市販の会社法の参考書でも、当条項を解説したものはまず見かけない。

 それが今回、突然日の目を見たのだが、菅弁護士の役員人事にそんな意味があるということを5月27日付の会社側リリースで気づいたのは、一部の専門家だけだっただろう。

監査等委員会が異例の独自開示

 会社が適時開示しない以上、株主は監査等委員会が意見を表明していることを、招集通知を見て初めて知る。例年より遅れている招集通知の発送を待っていたら、株主への周知徹底が遅れる。そう考えた監査等委員会が、独自のリリースを6月2日付で東証の記者クラブに投函した。これも過去に例がなく、本邦初。

 このリリースには、あらためて会社提案の取締役候補者3名を不適切と考える理由のほか、5月27日の会社側リリースには記載されなかった、それに対する会社側の猛反論も併せて記載されている。その内容は、この2日後にインターネット開示される、招集通知への記載内容と一致するのだが、その書きぶりはかなり激しい。

 3名いる監査等委員のうち、北野治郎氏と片岡義正氏の2名が、会社側と敵対している元名誉会長側に与しているとし、「監査等委員会の意見及びその表明に至る経緯には当社取締役会として承服し難い点が見られる」「監査等委員会の意見は取締役会として到底看過できない不相当な内容」とある。

 さらに、監査等委員会が、昨年夏の同社海外子会社における贈賄事件に関与した取締役の責任の有無を調査する「取締役責任調査委員会」を5月19日に立ち上げ、利害関係がない弁護士3名を委員として選任したことも記載されている。ちなみに、この取締役責任調査委員会が設置されていることを、会社側は今も適時開示していない。

 2日のリリースはこれ以上でもこれ以下でもなかったのだが、これに会社側は猛反発。4日に監査等委員の権限行使を不当なものとする、全7ページの反論リリースを出した。

 監査等委員会が、インターネット開示前の招集通知記載の内容や会社が適時開示していない取締役責任調査委員会の設置を公表したことは、重大な守秘義務違反に当たるとして激しく非難。

 その上で、監査等委員会の中立性に疑義があり、設置を決議した経緯や委員の選定プロセス、名誉会長側関係者の関与の有無などについての検証を進めているが、全容は明らかになっていない、としている。

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