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収入激減のタクシー業界から“逃げ出す”運転手が続出…東京五輪中止なら年収300万円台に?

文=前川佳樹/ライター兼タクシードライバー
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 これを予想して、転職するドライバーも増えている。大手配送会社のトラックドライバーによれば、「業務用スーパーの食料品や病院・福祉施設への医療用品、そして、アマゾンを中心としたネット通販の配送が急増している」とのことだ。宅配ドライバーに転職すれば、コロナ禍が継続したとしても収入は安定するだろう。

 しかし、かなりの肉体労働でもある。若ければ対応できるだろうが、一日中座ってきた中高年のタクシードライバーが簡単にできる仕事ではない。肉体的につらい労働をするぐらいなら、と絶望感のなかで仕事をしているドライバーも少なくない。

 売り上げが低いのはまだいいほうで、現況が続けば解雇される可能性すらある。東京のタクシー会社・ロイヤルリムジンが600人を解雇したことが大きなニュースになったが(現在は紆余曲折あって事業再開の手続き中)、売り上げが回復しなければ経営危機から廃業するタクシー会社も出てくるだろう。

 ロイヤルリムジンの場合、一般的なタクシー車両の約2倍もする高級車を用いて、インバウンド需要による空港送迎や観光タクシー、深夜の長距離需要にこたえる営業スタイルによる高コスト体質が災いし、事業の継続は難しいと判断して一斉解雇という選択をした。今後、恐慌ともなれば、低コスト体質の会社であっても、体力のない中小のタクシー会社は淘汰されていくだろう。

 そうなれば、残留を選択したドライバーも、やはり他業界への転職は避けられない。乗客が激減したなか、ほとんどのタクシー会社は新規雇用する余裕がないため、再びタクシードライバーとして転職することは難しいからだ。大幅な給与減を受け入れたとしても、今度は失業の恐怖におびえるだろう。

 労働の苦労が増大した上に収入は激減し、失業の恐怖にもさらされているタクシードライバーに救いはないのか。私もタクシードライバーとして悩ましいところである。今は国による「手取り収入が激減した世帯への支援」を期待したいが、財源に限りがあるなかでは難しいだろう。私自身も収入が激減したため、娯楽を制限しただけでは足りず、貯金を切り崩す生活となっている。コロナ第2波に襲われでもしたら、今後やりたいと思っていたことをことごとくあきらめ、とりあえず生きるだけの生活になりそうである。

 最後に、お客様へ切なるお願いで締めくくりたい。タクシードライバーは、密室のなかで1対1の接客となるためか、一定数存在するクレーマーの対応に日々頭を悩ませている。我々の接客や運転に問題があるケースも多いだろうが、そうでない場合は、タクシー利用の際、厳しい現実に直面しているドライバーを少しでも温かい目で見守っていただければ幸いである。

(文=前川佳樹/ライター兼タクシードライバー)

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