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マツキヨ、なぜ一人負け状態?ライバルは“新型コロナ特需”、ココカラとの統合にも影

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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マツモトキヨシの店舗

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う感染予防用品や生活必需品などの特需で業績好調のドラッグストアが多いなか、マツモトキヨシホールディングス(HD)は業績が冴えない。

 同社の既存店売上高は、3月が前年同月比10.6%減、4月が12.5%減、5月が13.7%減だった。2月は8.0%増と伸びていたが、一転して大幅減が続いている。

 一方、他の大手ドラッグストアは、多くが好調だ。ツルハHDは3月度 (15日締め、2月16日~3月15日)が14.5%増、4月度が3.6%増、5月度が4.1%増。ウエルシアHDは3月が6.1%増、4月が8.2%増、5月が5.0%増。売上高で業界トップ2のツルハとウエルシアは、ともに大きく伸ばした。コスモス薬品も大きく伸ばし、3月が6.8%増、4月が17.5%増、5月が15.2%増。スギHDは3月が6.9%増、4月が11.9%増、5月が7.3%増だった。この2社も好調が続いている。

 これらと比べると、マツキヨの落ち込みは異常だ。新型コロナの感染拡大を受けて、多くの小売業は店舗の臨時休業を余儀なくされたが、ドラッグストアは社会生活の維持に不可欠として、基本的に臨時休業はせずに営業を継続してきた。マツキヨも同様だ。だが、ドラッグストアの多くが売り上げを伸ばした一方、マツキヨは大きく落とす結果となった。

 それは、特に立地の違いが大きい。ツルハやウエルシアなど好調なドラッグストアは住宅街が近くにある郊外店が多い一方、マツキヨは駅前などの都心店が多い。都心店は新型コロナに伴う外出自粛や在宅勤務の広がりなどにより、客が激減した。この現象は郊外でも見られたが、都心のほうがより顕著だった。

 インバウンド(訪日外国人)需要の多寡も大きいだろう。首都圏や関西圏の駅前などの都心店はインバウンド需要が大きいという特徴があるが、新型コロナの世界的な流行に伴う海外からの入国制限でインバウンド需要が蒸発したため、同需要が大きい傾向にある都心店の多くが大きな打撃を受けた。

 一方、郊外店はインバウンド需要が極めて少ないため、この面での影響はほとんどなかった。マツキヨは都心店が多くインバウンド需要が大きい。2020年3月末時点のグループの免税対応店舗数は1095店で、全店舗の6割強にも上る。対応店舗は増えており、免税売上高は高まっていた。だが、新型コロナの影響で免税売上高は1月から減少したという。

主力の化粧品が売れず苦境に

 新型コロナの影響で化粧品が売れなくなったこともマツキヨにとって大きな痛手となった。これは、インバウンド需要の減少による影響が大きい。マツキヨでは売上高構成比率の約4割を化粧品が占め、最大の規模を誇る。コロナ前の19年3月期は、インバウンド需要の拡大で化粧品売上高は前期比4.7%増えていた。

 しかし、コロナが直撃した20年3月期は0.7%減とマイナス成長となった。新型コロナの影響で低調だったという。これはインバウンド需要が減少したほか、外出自粛や在宅勤務の広がりにより化粧をする機会が減り、化粧品の購入を控えた人が増えたことが響いたとみられる。

 品ぞろえの違いも明暗を分ける要因となった。コロナ下の3月と4月は、ドラッグストアでは商品種別において売れ行きの好不調がはっきりと分かれており、それが業績を左右した。

 経済産業省が発表した商業動態統計におけるドラッグストアの商品別販売額で、3月と4月に好調だったのは「ヘルスケア用品(衛生用品)・介護・ベビー」(3月が15.1%増、4月が18.3%増)、「家庭用品・日用消耗品・ペット用品」(同18.9%増、同20.2%増)、「食品」(同18.2%増、同27.2%増)だった。いずれも全体の伸び(同7.6%増、同10.8%増)を大きく上回っている。これらの分野は、業績好調のツルハやウエルシアなどが得意とするところだ。

 一方、不調だったのが「ビューティケア(化粧品・小物)」で、3月が10.2%減、4月が15.4%減と大きく落ち込んでいる。先述したとおり、この分野はマツキヨが得意とするところだ。一方、ツルハやウエルシアはこの分野は得意ではない。このように分野によって売れ行きに違いが生じており、それが各社の業績に大きな影響を与えた。

 このように、立地や品ぞろえの違いがコロナ下の3~5月の業績に違いを生じさせた。このことはサンドラッグココカラファインの状況を見ることで、より深く理解できるだろう。サンドラッグ(ドラッグストア部門)の既存店売上高は、3月が2.8%減、4月が3.3%減、5月が3.9%増だった。ココカラファイン(ドラッグストア部門)は3月が9.2%減、4月が9.4%減、5月が10.3%減だった。どちらも3~5月の業績は良いとはいえない。

 サンドラッグとココカラは、マツキヨと同じように都心店が少なくなく、化粧品売上高の比率が高いという特徴がある。化粧品売上高の比率に関しては、サンドラッグは3割強で最大となっており、ココカラは約3割で最大の医薬品に僅差で次ぐ。2割に満たないツルハやウエルシアと比べると、比率の高さがわかるだろう。このように、サンドラッグとココカラは化粧品売上高の比率が高く、都心店も少なくないため、マツキヨと同様に新型コロナがマイナスに作用した。

 マツキヨは新型コロナが逆風になっているが、これは来年10月に予定しているココカラとの経営統合に影を落とす。両社が統合すれば、ツルハやウエルシアを超える売上高1兆円規模の企業となる。マツキヨとココカラは、それぞれ強みを持ち寄って相乗効果を発揮し、競争を勝ち抜きたい考えだったが、インバウンド需要の低迷が足かせになりかねない。

 両社は都心店が多いことと化粧品に依存しているという点が似ており、さらに新型コロナが逆風になっているところも共通する。これらを回復させるポイントとなるのはインバウンド需要だ。だが、同需要は当面、当てにできない状況にある。この問題をどのように対処していくのかに関心が集まる。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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