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Google Play Musicがひっそり終了…“音楽聞くならYouTube”へ誘導

文・取材=福永全体/A4studio
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「Google Play ストア」より

 グーグルが提供している音楽ストリーミングサービス・Google Play Music(以下、GPM)が年内で終了し、グーグル傘下のユーチューブが手がけるYouTube Musicと統合されることが発表された。GPMユーザーが持っている音楽ライブラリや設定、プレイリストをYouTube Musicに移行できるツールの提供も開始し、現在は移行期間中だ。

 しかし、そもそも音楽ストリーミングサービスであるGPMを、あまり知らなかったという方も多いのではないだろうか。それもそのはず、音楽ストリーミングサービスにおいて高いシェアを誇るのはSpotifyやApple Music。GPMはそんな2強の陰に追いやられ、話題に上る機会も少なかったのだ。

 一部ではGPMの有料会員数が伸び悩んだことが、サービス終了の決め手になったと囁かれていたが、統合先のYouTube Musicも、まだまだ知名度は低い。では、今回の統合の狙いは一体どこにあるのだろうか。激変する音楽業界について綴った『ヒットの崩壊』(講談社刊)などの著書を持つ音楽ジャーナリスト・柴那典氏に話を聞いた。

サービス統合の原因はGPMの失敗…ではなかった

「まず、音楽ストリーミングサービス全般の話をしますと、2015年にApple MusicなどIT大手によるサービスが始まって以来、基本的にはユーザー数・利益ともどもすべての領域で伸びています。そしてGPMも黎明期である2015年に開始したサービスのひとつです」(柴氏)

 GPMは月額980円で、4000万曲が聴き放題。ストリーミングサービスのほかに、無料で手持ちのCDやダウンロードした音楽をクラウド上に保存しておける機能も持ち合わせていた。そんなGPMは音楽ストリーミングサービス界においてどんな存在だったのだろうか。

「月額料金も、聴ける曲数もほかのサービスと比較して大きな差異はなかったと思います。使い勝手も良く、利用ユーザーから不満の声が上がっていたとか、そういう話はあまり聞いたことはありません。特徴的なユーザー層などもなく、いわゆるフラットなサービスだったという印象です。しかし、18年にYouTube Musicが始まったことによって、ここ2年ほどはグーグル社内で似たようなストリーミングサービスが2つあるという状態になっていました」(柴氏)

 ライバルに劣らない曲数の音楽を楽しめたというGPMだが、サービスを終了させ、YouTube Musicと統合することになった。このサービス終了の狙いは「YouTubeに力を入れてサービスを拡大させるためだろう」と柴氏は分析する。

「まず、一般ユーザーにどのサービスを利用して音楽を聴いているかと質問をしたときに、SpotifyやApple Musicなどを凌駕してダントツで回答が多いのがYouTube。どんなストリーミングサービスよりもYouTubeでミュージックビデオを無料で見る、というかたちで音楽を聴いている人が多いということです。

 GPMは機能面はほかの音楽ストリーミングサービスと大差なく、かつ自分の持っているコレクションをクラウドに保存できるという意味でも便利なサービスではありました。ですがGPMにとっては皮肉にも、同じグループのYouTubeで音楽を聴くことが、完全にリスナーの生活に根付いていたのです。言い換えればYouTubeがうまくいきすぎていたんです。

 ですから、今回の統合はGPMが失敗した、知名度が低かったという言い方もできると思うのですが、YouTubeが驚異的な成功を収めていたため、YouTubeに力を入れたほうがサービスとしての拡大が見込めるという理由のほうが、むしろ大きいと思います。YouTubeに有料プランが導入された段階で、すでにYouTubeへのテコ入れが始まっており、その流れの一環での統合ということなんでしょう」(柴氏)

YouTube Musicとの統合で期待される、音楽業界への還元額増加

 さらに柴氏は、GPM とYouTube Musicが統合されることによって、これまで音楽業界が抱えていた“バリューギャップ問題”が緩和され、還元額が増えていく可能性を語る。

「実はこれまで、YouTubeは日本だけでなく世界の音楽業界と衝突していたのです。YouTubeでは無料ユーザーがミュージックビデオを再生すると、再生1回あたりの広告料金がアーティスト側に入っていました。しかし、この広告料金はストリーミングサービス1回の再生にあたるアーティスト側の収益と比較すると、桁がひとつ、下手すればふたつ少ないくらい安かったのです。これがバリューギャップ問題です。

 それではせっかく再生回数を稼いでも大きな収益にならないため、世界中の音楽業界が不満を募らせていました。そんななかで、定額音楽サービスのYouTube Musicがスタートしたのです。YouTube Musicはサブスクリプションサービスなので、ユーザーが支払ったお金は楽曲の再生回数に応じてアーティストに支払われます。YouTubeがサブスクと無料プランを併用したフリーミアムなサービスになることで、YouTubeの再生回数がより、アーティスト側、音楽業界側の利益につながりやすい状態がつくり上げられたんです。

 そして今回、グーグルのなかでGPMとYouTube Musicが統合されるようになる。今回の統合が直接大きな変化をもたらすわけではないでしょうが、加えて無料プランから有料プランへ移行するユーザーを増やしてYouTube Musicを強化していければ、音楽業界への還元額が増えていくだろうと期待されています。

 YouTubeを無料で見ている大多数のユーザーにとっても、定額を支払っていくことでより使い勝手のいいYouTubeの音楽サービスが利用できるという選択肢が出てくるのもひとつのメリットでしょう。もちろんこれまでGPMを利用していたユーザーにとっては、転送が面倒だとか、新しいサービスに慣れる必要があるとか、しばらく不便をこうむるというデメリットはあります。しかし、やはり業界的にいえばデメリットはなく、メリットが大きいといえるでしょう」(柴氏)

 インターネットの発達に伴い、芸術作品が安価で搾取されることが問題視されるようになっている。しかし、今回のGPMとYouTube Musicの統合は、再生回数という数字に応じてアーティストへ適切に還元するための、大きな一歩ともいえるのだろう。
(文・取材=福永全体/A4studio)

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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