5月中旬には、RIZAPグループ全体の店舗の7割が臨時休業に追い込まれた。20年3月期決算では稼げなくなった店の減損損失などで59億円の特別損失を計上した。2期連続の大幅赤字により、金銭消費貸借契約上の財務制限条項に抵触したが、「金融機関からは債務返済を請求しないとの承諾を得ている」(瀬戸社長)という。21年3月期の業績予想は「合理的な算定・予想ができない」として公表を見送った。
プロ経営者、松本氏の代わりに招いた中井戸氏からも三下り半
瀬戸氏が積極的なM&Aを進めた結果、RIZAPグループ子会社群は一時期、80社を超えた。悲願としていた札証アンビシャスから東証1部上場への昇格を実現するため、18年6月、指南役として元カルビー会長兼CEOの松本晃氏を三顧の礼をもって取締役に迎えた。
松本氏は、新規のM&Aを進めようとする瀬戸氏に待ったをかけ、18年に凍結。20~30代の女性をターゲットにした婦人服・服飾雑貨を企画・製造・販売するアパレルSPAの三鈴(東京・品川区)の身売りやフリーペーパーを発行するサンケイリビング新聞社(東京・千代田区)の一部事業の譲渡などにより黒字化を目指した。
その松本氏はわずか1年でRIZAPグループを去った。松本氏と入れ替わるように、19年6月、中井戸信英氏と望月愛子氏が社外取締役に就いた。中井戸氏は住友商事で副社長を務めた後にシステム開発会社・CSK(現SCSK、住商情報システムがCSKを吸収、東証1部)で社長・会長を歴任した。望月氏は経営コンサルティング会社・経営共創基盤のマネージングディレクター。企業再建に関わってきた経験を持つ。ところが、この2人も今年3月、社外取締役を辞任した。1年をたたないうちに、三下り半を突き付けたのはなぜか。
「コロナ後の経営戦略をめぐって対立した」(関係者)と見られている。瀬戸社長は「コロナ危機を、成長戦略に転じる絶好のチャンス」と捉えたようだ。4月以降を「構造改革の最終段階」と位置付け、再び成長路線にカジを切るつもりだった。松本氏によって封印されたM&Aを再開させるということだろう。M&Aは瀬戸社長の経営の原点でありRIZAPグループに成長をもたらす源泉だ。こうした性急な方針転換に、2人の社外取締役が異議を唱えたようだ。
松本氏、中井戸氏、望月氏。外部から招いた経営指南役は、いずれも短期間で辞めていった。ブレーキ役を失ったRIZAP号はどこへ向かうのか。ゾンビ企業を買収して「負ののれん代」を利益として計上して、利益をカサ上げする経営手法が、Withコロナの時代に通用するのか。RIZAPグループの迷走は続く。
(文=編集部)