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上昌広「絶望の医療 希望の医療」

C型肝炎の新薬、講演会等で称賛する医師に年1633万円支払いも…製薬企業から

文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長
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 他社も指を咥えて見ているわけではない。複数の企業が、C型肝炎市場に参入した。2015年11月アッヴィ合同がヴィキラックス、2016年11月MSDがエレルサ・グラジナ、2017年2月ブリストル・マイヤーズスクイーブがジメンシーを発売した。ところが、いずれもうまくいかなかった。ギリアドの販売戦略が巧みだったからだ。

 HCV対策が充実した昨今、C型肝炎の新規発症はわずかだ。新薬が効けば、患者がいなくなってしまう。毎年、新規発症が期待できる高血圧や糖尿病とは違う。売上を最大化するには、他社が参入する前に、自社の薬を売り切ってしまわねばならない。発売直後のスタートダッシュが大切だ。

 ソバルディとハーボニーは、発売初年度の2015年度に1509億円、2693億円を売り上げた。2016年度には713億円(マイナス53%)、1647億円(マイナス39%)と売上を落としている。これは従来の医薬品の売り上げが発売開始から数年を経てピークに達するのとは対照的だ。

 どうして、こんな芸当が可能だったのだろう。多くの専門家は「画期的な新薬だったから」と言うが、それはソバルディやハーボニーに限った話ではない。

キーオピニオンリーダーへの厚遇

 ギリアドが重視したのは「キーオピニオンリーダー」と言われる著名な医師の囲いこみだ。発売後は全国各地で講演会が開催され、医療業界誌には「最適なIFNフリー療法を選択できる時代に 国家公務員共済組合連合会虎の門病院分院長熊田博光氏」のような記事が数多く掲載された。このなかでソバルディとハーボニーは賞賛されている。

 このような記事に登場する医師には、製薬企業からカネが支払われる。製薬データベースを用いて、2016年度に「キーオピニオンリーダー」である日本肝臓学会の「C型肝炎治療ガイドライン」委員17人に支払われたカネを調べた。結果は、全員が製薬企業からカネを受け取っており、一人あたりの平均は393万円だった。

 もっとも多いのは、前出の熊田医師で1633万円、泉並木・武蔵野赤十字病院院長の1012万円、小池和彦・東京大学⼤学院医学系研究科消化器内科学教授の586万円と続く。

 一方、支払の多い企業はアッヴィ合同の1433万円、ブリストル・マイヤーズスクイブの1423万円、MSDの845万円だ。不思議なことにギリアドの名前はない。それはギリアドが日本製薬工業協会(製薬協)に加盟していないからだ。製薬マネーの開示は製薬協の自主的な取り組みで、非会員企業に義務はない。自主的に公開している企業はあるが、ギリアドにそのつもりはない。製薬企業の社員は「常識的に考え、途方もないカネが販促に使われたはず」と言う。

 ギリアドの牙城を崩したのがアッヴィ合同だ。2017年11月に発売したマヴィレットがソバルディ、ハーボニーを淘汰した。2018年度の売上は1177億円。この年の国内の医療用医薬品の売上トップだった。マヴィレットは1型、2型を含むすべての遺伝型に使え、投与期間は8週間と短いが、販売増にもっとも効いたのはギリアドから「キーオピニオンリーダーを奪還した」(製薬企業社員)からだ。

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