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上昌広「絶望の医療 希望の医療」

C型肝炎の新薬、講演会等で称賛する医師に年1633万円支払いも…製薬企業から

文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長
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巨額の製薬マネー

 その象徴が前出の熊田博光医師(現虎の門病院顧問)だ。2016年度、製薬企業から1633万円を受け取っているが、アッヴィ合同から受け取ったのは835万円だ。2位のブリストル・マイヤーズスクイーブの329万円の倍以上だ。熊田医師は、アッヴィ合同が主催する講演会などで、マヴィレットのことを「8週治療でC型肝炎治療の第一選択に」や「C型肝炎の治療は究極のところまできた」と褒めている。

 熊田医師は前出の日本肝臓学会の「C型肝炎治療ガイドライン」以外に、厚生労働省の「科学的根拠に基づくウイルス性肝炎診療ガイドラインの構築に関する研究」の班長、「肝炎治療戦略会議」の委員など歴任した大物だ。私も虎の門病院在職中に御指導いただいたが、高い臨床能力、研究能力を兼ね備える希有な存在だ。さらに指導力も高い。弟子も多く、前出の茶山一彰・広島大学教授の前職は虎の門病院「熊田一家」の卒業生だ。

 熊田先生は、少々、オーバーに褒めたところもある。エビデンスに基づかない発言もした。例えば「HCVに感染していれば治療対象」という発言だ。慢性肝炎の患者はともかく、キャリアーまで治療すべきかは意見が分かれる。進行しない患者が多いからだ。ところが、キャリアーは慢性肝炎患者の5倍以上いる。財政負担は大きくなる。

 本来、臨床試験で検証すべきだが、わが国では議論する前に、根こそぎ治療してしまった。マヴィレットの2018年の四半期ごとの売上推移は前代未聞だった。第2四半期の423億円の売上がピークで、第3四半期は299億円と売上を落とした。発売から1年以内でピークアウトした。当時、ライバルのギリアドは新薬のエプクルーサ配合錠を開発しており、2019年2月に発売したが、その前に残されていた患者を治療してしまった。

 マヴィレットの開発により、アッヴィが時価総額約13兆円の大企業に成長し、医師は巨額の製薬マネーを受け取った。しかしながら、これが患者の福音になったのかは疑問の余地がある。無駄な投薬、避けられた副作用が起こっているかもしれない。今回の経緯は患者目線で見直さねばならない。

(文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長)

●上昌広(かみまさひろ)

1993年東大医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。 虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の診療・研究に従事。

2005年より東大医科研探索医療ヒューマンネットワークシステム(後に先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年3月退職。4月より現職。星槎大学共生科学部客員教授、周産期医療の崩壊をくい止める会事務局長、現場からの医療改革推進協議会事務局長を務める。

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