NEW
湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

一気に普及したオンラインセミナー、受講して見えた“致命的な欠陥”…私の改善案

文=湯之上隆/微細加工研究所所長

 しかも、図は一切使われず、会話だけでセミナーが進行し、池上氏と4人のパネラーの発言は、定量的で具体的なものは何もなく、抽象論だけが語られていたように感じられた。このセミナーの登壇者たちにとっては、もはやコロナは終わったことになっているのだろうか?

 セミナー中には、チャット機能で質問を書き込めるようになっていた。そこで、「4人の方、全てにお聞きします。あなたの会社や組織で、コロナが疑われる社員が出たら、あなたはどのように対処されますか?」と質問してみた。しかし、筆者の質問は、事前に送ったものも含めて、取り上げられることはなかった。約90分のセミナーは、キラキラと美しく、しかし現実味がない話で幕を閉じた。筆者の頭に残ったのは、「このセミナーはいったい、なんのために開催されたのだろうか?」という謎であった。そして、大きな不満を持った。

2.『“【SEMI Japan ウェビナー】SEMI Japan Members Day SPECIAL”』

 SEMI Japanとは、日本の半導体業界団体である。そのSEMI Japanは毎年2回、リアルなセミナーを開催している。実は6月3~4日に開催されるSEMI Japanのリアルなセミナーで、筆者は『EUVの普及と課題』について講演する予定だったが、中止となった。その代わりに、上記のオンラインセミナーが開催されたのである。

 つまり、筆者は上記セミナーの登壇者になるはずだった。ところが、6月18日は、Web会議が多数予定されていてオンラインセミナーの講師になることができないため、今回は辞退した。このセミナーは、今後も毎月1回のペースで行うため、どこかで登壇してほしいと依頼を受けている。そこで、いつか自分にお鉢が回ってくるかもしれないという考えもあって、本セミナーに参加したわけだ。

 今回のセミナーでは、以下の2つの講演があった。

1)『With/After COVID19時代に向けたWorkforce Transformation(組織・人材改革)』アクセンチュア 金若秀樹氏

2)『シリコンウェーハから見る 半導体市場と技術』 SUMCO 小森隆行氏

プレゼンは具体的だったがQ&Aの時間が短い

 講演はパワーポイントを使ったもので、アクセンチュアの金若氏はウイズ・コロナおよびアフター・コロナの時代における組織や人事改革について具体的な話をされた。例えば、コロナ禍により、突然、テレワークをせざるを得ない状況となった。コンサルタントとして、どのようにカスタマーとWeb会議を行ったらいいか、部下の仕事をどう管理したらいいか、コロナが終息した後にはどのような組織であるべきか、などである。

 予定では30分のプレゼンの後、10分のQ&Aの時間がとられていた。しかし、実際のQ&Aは5分くらいだったかもしれない。質問したい者はPCの画面の「挙手」のボタンを押す。そして主催者側が、その人のミュートを解除すると、質問できるという仕組みだった。

 筆者は講演終了後ただちに「挙手」した。最初に指名されたのは、別の方だった。ところが、その方の音声が聞こえなかったため、その質問はパスとなり、筆者が指名された。そこで、「完全なテレワークをせざるを得ない今、新規顧客を開拓するのは難しいのではありませんか? 例えば、アクセンチュアさんもコンサルタント会社として、新規顧客への営業を行う必要があると思いますが、どのような工夫をされていますか?」というようなことを質問した。

 金若氏は、「今回のようなセミナーを開催したり、バーチャルな展示会を行ったらどうでしょうか? 今回のセミナーは約1000人が参加されているそうです。リアルなセミナーの場合、1000人が参加申し込みをしても、会場に来るのは30~40%程度です。オンラインセミナーは、非常に参加率が高い。それを利用するのは一つの手段です」と回答された。筆者は「なるほど」と納得した。金若氏には、もう一つのQ&Aがあった。したがって、最初の空振りの人を含めて3人の質問者があったことになる。

 続く講演で、半導体ウエハメーカー・SUMCOの小森氏は「コロナ禍にあっても、プロセッサもDRAMも、微細化を続けていく」ということを定量的に論じた。この話は、筆者の専門分野のストライクゾーンのど真ん中だったので、講演終了後、直ちに「挙手」した。1人目の質問者が指名され、2人目になり、そして3人目の時、司会者が「これが最後の質問です」と言ったときには、驚くとともに、「なぜ私に質問させてくれないのか?」と相当がっかりした。

オンラインセミナーの長所と短所

 以上、オンラインセミナーに2回参加した結果、その長所と短所がわかってきた。まず、長所としては、自宅にいながらセミナーに参加できることが挙げられよう。極端な話として、ネットがつながる環境さえあれば、日本中、いや世界中どこからでも参加できる。しかも、移動時間とコストは一切かからない。これは、オンラインセミナーの最大の長所であろう。

 一方、短所もある。それは、セミナーの講師からは参加者の顔が見えないということである。つまり参加者の全ての顔とその表情が、講師にはわからない。したがって、講師としては参加者が理解できているのか、理解しているなら賛同しているのか反対なのか、ということが一切わからないことになる。その結果として、コロナ禍にあるはずなのに、キラキラ美しい話で終わってしまうことになるのである。

 筆者は年間10~20回くらい講演を行う。その際、パワーポイントを使いはするが、参加者の顔を見ながら話すようにしている。講演内容には起承転結をもうけ、ここでアッと言わせようというような仕掛けをする。しかし、それがうまくいくかどうかは、参加者の理解度を読む必要がある。しかし、オンラインセミナーでは、それは困難である。

 そして、今回体験した2つのオンラインセミナーは、致命的な欠陥があったといわざるを得ない。それは、リアルなセミナーと同様な時間配分をしたことである。池上氏のセミナーは約6000人、SEMI Japanでは約1000人の参加者があったそうである。ならば、Q&Aの時間を5~10分程度にするのは間違っている。30分の講演を真剣に聞いていれば、誰もが必ず1つや2つの質問をしたくなるものだ。したがって、充分なQ&Aの時間を取らなければ、参加者の多くは満足できないだろう。実際、筆者は大いに不満だった。

 そこで、7月7日に筆者が行うLive配信方式のオンラインセミナーでは、参加者の全てが質問できるくらい、充分なQ&Aの時間を取ろうと覚悟した次第である。

(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)

・お知らせ

半導体関連企業がコロナ禍を生き抜くための指針をお伝えするために、サイエンス&テクノロジー主催のLive配信セミナーを企画しました。

【Live配信セミナー】 

『コロナ禍の半導体産業を生き抜くための羅針盤

・コロナ禍でも成長している世界半導体産業

・アフター・コロナ(AC)で覇権を握るには自己防衛が必要

・米中ハイテク戦争の新たな局面』

日程: 7月7日(火) 13:00~16:30 (正味3時間)

講演形式: 

原則としてLive配信での開催ですが、限定10名につき会場受講ができます。尚、東芝関係者からZOOMでは受講できないとの連絡があったため、急遽、ZOOMを使わない方式に変更いたします。

詳細は、サイエンス&テクノロジーの以下のサイトをご参照ください。多くの半導体関連企業の皆様の参加をお待ちしております。Q&Aの時間をたっぷり取ることをお約束します。

https://www.science-t.com/seminar/A200707.html

関連記事

プレスリリース入稿はこちら サイゾーパブリシティ