ホンダ・新型「アコード」、なぜ日本投入は米国より2年半も遅れた?客層の若返りに成功の画像1

 この春から、本田技研工業(ホンダ)の新型「アコード」が発売された。ホンダの伝統を支えてきた主力ブランドであるだけに、注目度は高い。

 とはいうものの、ミドルセダン市場のシュリンク(規模縮小)は頭の痛いところだろう。これまでファミリーカー需要に支えられてきたミドルセダンの座が、SUV(スポーツ用多目的車)に奪われつつある。法人需要が残っているとはいえ、右肩下がりのジャンルであろうことは明らかだ。それは世界的な傾向である上に、特に日本では顕著。ミドルセダンのヒット作は、トヨタ自動車「カムリ」を除くと、あまり耳にしない。

 

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 実は、新型アコードはすでに2017年秋にアメリカでデビューしている。今回、本国である日本に導入された「アコードHV」も、アメリカでは2018年春に販売を開始しているのだ。その後、中国からタイへと各地でデビューをこなし、アメリカのデビューから2年半も遅れて日本に導入されるというから、いかに日本市場が期待されていないかを物語る。

 生産の都合により、世界同時にデリバリー開始することができないという事情もある。仕向地ごとに販売の足並みが揃わないことは少なくないが、それにしても本国である日本が最後というのは、いかに日本のミドルセダン市場が縮小しているかを証明している。

 ともあれ、ホンダはアコードに期待はしている。今回のフルモデルチェンジは、記念すべき10代目となる。黙って手をこまねいているわけではなく、新たな手法にトライした。それは、いうなれば「若返り」である。

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 アコードの顧客は、代替客が大勢だという。アコードからアコードへの乗り換え需要が高いのだ。それはすなわち、アコードが愛されていることでもあり、正しく評価されている証拠でもある。だが、それに伴って高齢化が進んだ。ミドルセダンの縮小と高齢化は、アコードの将来性に不安を覚える。つまり若年化が求められているのである。

 新型アコードが4ドアクーペとも思えるようなスポーティなスタイリッシュになったのは、若年化の方策のひとつだ。これまで伝統的に守り通してきた、ボクシーな3ボックスフォルムからの決別である。最近のホンダデザイナーが好む、湾曲した面とねじれた線と、そして数々の突起が複雑に入り組んだボディデザインから脱却している。

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 そのゴテゴテとしたデザインは「若いガンダム世代の好み」として貫き通してきたが、新型アコードでは、ついにホンダがいうガンダム世代を狙っているのに、シニアにも納得しやすいシンプルな造形に挑んだのだ。そしてそれは、成功した。

「アメリカの購買層は確実に若返っています。驚くことに、中国では20代にも支持され始めました」

 開発責任者の宮原哲也・主任研究員は、そういって頬を緩めた。若い層へ擦り寄るためのゴテゴテとしたガンダムフォルムから脱却したが、かえって若い層に気に入られたという。

 そんな新型アコードは、インパネもすっきりしており、ハイブリッドの走りも落ち着きがある。ともすれば“オヤジくさい”と思えるような作り込みが散見されるのだが、それが若年齢化の鍵となるのだから、商品企画とは複雑で面白い。

(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

 

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