NEW
野村直之「AIなんか怖くない!」

世界一達成のスパコン「富嶽」、すでに人類的課題の解決に活用…AIとDXで社会を幸福に

文=野村直之/AI開発・研究者、メタデータ株式会社社長、東京大学大学院医学系研究科研究員
【この記事のキーワード】, ,

「富嶽」の優先活用テーマ

「富嶽」は、実はフルスケールで完成するより前倒しで実践に投入されました。学徒出陣みたいのようですが、非常に高い完成度、高性能で喫緊の人類的課題の解決に活用され始めています。理研の発表「新型コロナウイルス対策を目的としたスーパーコンピュータ『富岳』の優先的な試行的利用について」では、次の5つの課題を挙げています。

(1)新型コロナウイルスの性質を明らかにする課題

(2)新型コロナウイルスの治療薬となりえる物質を探索する課題

(3)新型コロナウイルス診断法や治療法を向上させうる課題

(4)新型コロナウイルスの感染拡大及びその社会経済的影響を明らかにする課題

(5)その他、新型コロナウイルスの対策に資することが想定される課題

 新型コロナウイルスの対策につながるあらゆる研究テーマの提案を受け付けているとのことです。「我こそは!」という人はぜひこのページに記載の問い合わせ先にメールを送ってみてください。

 すでに実施している研究はこのページで紹介されています。「医学的側面からの研究」として、「『富岳』による新型コロナウイルスの治療薬候補同定」他2つ、新型コロナウイルスの性質を明らかにする研究が走っています。医学的側面というのは、ヒトの1個体を相手にしますが、室内空間でのウイルスの拡散や、多人数の社会でどう感染が広がるかの研究も重要です。こちらは、「社会的側面からの研究」とされ、各1つの研究が、富嶽の膨大な計算パワーを駆使して進行中です。

 すでに進行中のテーマには、あまりAI的なものはないようです。ただ、先述のように、ビッグデータからなんらかの法則性を見いだすような役割はAIが担います。ウイルスや治療薬候補の性質を解明する手段として、AI的な手法が使われることはあるでしょう。そのようなAIが機能するためにもスーパーコンピューターは欠かせません。

AIと、DX、オープンイノベーションの関係

 時事ネタが長くなりました。人類の一大事への取り組みということでご容赦ください。今回の表題に絡めて、「AIと、DX、オープンイノベーションの関係」を簡単に整理して締めくくりたいと思います。

 まだ人類が持たざる知識を発見し、それを使って真理の探究や課題を解決するのが「研究」の役割です。一方、産業界で使われる「イノベーション」という言葉は、革新的な技術開発や、斬新なビジネスモデルの考案と実践の両面を指します。研究は必ずしも役に立たなくてもいいのですが(新型コロナウイルス関連の課題は役立つものばかりですが)、ビジネスにおける技術開発は産業上のメリットを生まなくてはなりません。

 だからといって、常に秘密裏に技術開発をすればいいというのではありません。アップルのような徹底した秘密主義の会社もありますが、世界中の知恵を結集し、データを出し合い、要素技術開発や実証評価を分担するような「オープンイノベーション」の重要性が昨今、叫ばれています。あのIBMですら、「うちの会社規模ではすべての要素技術を自社開発するわけにはいかない」と公然と唱えるくらいです。

RANKING

11:30更新
  • 連載
  • ビジネス
  • 総合