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一ベンチャー企業が宇宙ロケット開発を大きく前進…巨額税金投入の官民共同開発は難航

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授

 インターステラは1回の打ち上げ費用を5000万円程度に抑えることを目指している。同社のビジョンが実現すれば、日本の宇宙開発は大きく前進するだろう。

難航する官主導でのロケット開発

 事業の運転資金が潤沢ではないなかで、常にコスト管理を徹底し、改善を重ねて成功を目指すインターステラの取り組みは参考にすべき点が多い。

 政府は手厚い予算をJAXA(宇宙航空研究開発機構)につけ、ロケット開発が進められてきた。その背景には、ロケット打ち上げ実験のように、多くの人材と土地、専門の資材などが必要な分野は、民間に任せるよりも政府(官)主導で進めたほうが良いとの考えがある。

 民間と対照的に、政府には効率性や採算性を重視する発想が乏しい。そのため、どうしても官主導のプロジェクトに関しては、スピードやコスト面への意識が高まりづらい。JAXAのロケット開発は、品質に万全を期すために特注品の資材を用いるなど、1回の打ち上げには数十億円の費用がかかる。

 また、組織の対立などから開発が遅れるケースは多い。官民共同で開発が進められた中型のGXロケットの場合、エンジン設計などをめぐって組織間の衝突が解消できなかった。その結果、予定よりも開発が大幅に遅れコストが膨張した。最終的にGXロケット計画は旧民主党政権の“事業仕分け”によって中止された。

 高度な専門知識をもつ人材や企業からの技術面での協力が確保できたとしても、そうした生産要素をフルに生かすリーダーシップがなければ、新しい取り組みは進まない。突き詰めていえば、新しい事業にすべてをかけているという気概のあるトップなくして、新しい事業の育成は難しい。

 国が官民共同でのロケット開発に苦戦する一方で、中国は急速に競争力をつけている。中国では土地が国有だ。日本企業に比べ、中国の国有企業などが土地を取得する原価は極めて低い。その上、中国政府は産業補助金も支給してロケットを開発し、測位衛星の運用台数を増やした。これまでの日本の発想で競争が熾烈化する環境に対応できるとはいいづらい。

重要性高まる民間企業の活力

 インターステラには、コストの削減を徹底する以外の面でも参考になる点がある。その一つが産学連携だ。同社は室蘭工業大学と連携してロケットの部品開発などを行ってきた。本年3月に同大学はインターステラが拠点を置く北海道大樹町と連携協定を結び、施設の利用活発化などが期待される。

 インターステラのロケット開発は鉄鋼の町として発展してきた室蘭市にも影響を与え始めている。同市には航空機部品や金属加工を手掛ける企業が多く、航空関連の技術を高めようと企業の連携が進んでいる。インターステラが小型ロケットの打上げ技術を高めることができれば、産学連携や企業の提携は強化され、室蘭市がわが国有数のロケット・航空技術の集積地として存在感を発揮する可能性がある。

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