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藤和彦「日本と世界の先を読む」

コロナ治療、中外製薬のリウマチ薬の有効性が証明されつつ…臨床試験が最終段階に

文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員
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 それでは、なぜ新型コロナウイルスはサイトカインストームを引き起こすのだろうか。平野氏らの研究によれば、ARDSとなった患者の血液ではサイトカインの一種であるインターロイキン6(IL6)の濃度が上昇している。IL6は免疫反応など生体の恒常性維持に必要なサイトカインだが、炎症性を有することから、サイトカインストームの中心的な役割を果たすとされている。IL6を大量に分泌するための増幅回路(IL6アンプ)があるが、新型コロナウイルスが増殖する気管支や肺胞上皮にもIL6アンプが存在する。このことから、気管支や肺胞上皮に侵入した新型コロナウイルスがIL6アンプのスイッチをオンにしてしまい、サイトカインストームが起きてしまうということがわかる。

「アクテムラ」年内の承認申請へ

 IL6の分泌を抑えれば、サイトカインストームは起きないとされる。IL6の暴走を抑えることができれば新型コロナウイルスの致死性は格段に低下するが、これを実現する薬はすでに存在する。

 薬の名前は「アクテムラ(トシリズマブ)」。アクテムラは、世界初のIL6阻害剤として大阪大学と中外製薬により共同開発された。トシリズマブの「トシ」はインターロイキン6の発見者である平野氏に由来する。国内では2008年に関節リウマチ(免疫の異常により手足の関節が腫れる病気)用として承認されている。

 アクテムラの新型コロナウイルスの治療薬としての有効性についての臨床試験は、すでに始まっている。中外製薬の提携先であるスイス・ロシュは3月から米国・カナダ・欧州などで臨床試験を開始し、現在最終段階だが、非常に有効な治療薬であることが証明されつつある(6月29日付「日経バイオテク」)。中外製薬も4月から国内で臨床試験を始め、年内の承認申請を目指している。

 日本では軽症者向けに新型インフルエンザ用として開発された「アビガン(富士フイルム富山化学が開発)」が投与されているが、重症向けに「アクテムラ」が投与されるようになれば、新型コロナウイルスがありきたりの「はやりかぜ」となるのではないだろうか。

 と思っていた矢先に、中国で新たな「パンデミックウイルス」候補が豚から発見されたとの報道が飛び込んできた。一難去ってまた一難である。

(文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員)

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