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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

北朝鮮、史上最悪の経済難で餓死者も…人民の不満充満、暴動で金正恩政権“転覆”の危険

文=相馬勝/ジャーナリスト
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金与正氏と金委員長の連携プレー

 このように、金指導部はぎりぎりまで追い込まれており、国内の引き締めに躍起となっている。金委員長は6月の党中央軍事委員会拡大会議の予備会議で、「軍内の規律は鋼鉄のごとく硬く強いものでなければならず、軍人の自堕落な姿勢はすべてを破壊しかねない」などと述べて、「6月を軍の規律確立の月に指定する」と命令。これを受けて、軍の監視監督機関を統括する金委員長直属の「軍政指導部」は軍内での任務時間での飲酒や喫煙を禁止し、兵士のけんかや暴力沙汰、兵営からの脱走、命令なしの戦線離脱などの軍規違反を厳しく取り締まることを決めた。

 軍政指導部は4月に発足したばかりで、軍総政治局をはじめ、軍団司令部と将官級の私生活まで検閲、現場で逮捕もできる強大な権限を持つ金委員長直属の秘密親衛部隊だけに、金委員長が軍事力強化のための軍の引き締めに動いたといえる。

 一方、南北共同連絡事務所の爆破を事前に予告するなど強硬派ぶりをあらわにした金与正氏は、金剛山や開城工業区、南北の非武装地帯などへの軍の再駐留を明言するなど軍との連携を誇示。そのうえで、「朝鮮労働党と国家に忠誠を尽くせば、脱北者の親族であったとしても、その赤誠を尊重しなければならない」などとも述べて、国民の人心掌握に乗り出す構えで、正恩氏に次ぐナンバー2としての存在感を示した。

 しかし、その後、すぐに金委員長が「対南軍事行動計画の保留」を発表したが、これは「こわもての与正氏」「余裕の金委員長」という両者の役割分担であり、国内引き締めのための計算された連携プレーとの見方も出ている。

 なぜならば、今、北朝鮮軍が韓国に軍事行動を起こせば、ただでさえ食糧不足などの経済難に陥っている北朝鮮の民衆は動揺し、「食糧一揆」さえも起こりかねず、政権転覆の可能性も捨てきれないからだ。金与正氏が強硬な発言をして、軍を含む北朝鮮の国民をハラハラさせて、最高指導者の金委員長が与正氏の発言を否定すれば、国民は安心し、金委員長を讃嘆し、政権は安定するという図式で、金委員長の発言は安定を求める民心を考慮したものといえるのである。

(文=相馬勝/ジャーナリスト)

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