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飲食チェーンの出店戦略の秘密…1号店の絶妙な立地、ラーメン店に1階の路面店が多い理由

文=松嶋千春/清談社
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【公式】寿司 あおい|令和の寿司屋に新しい文化を」より

 2019年12月、ダイニングイノベーションが手がける「寿司 あおい」の1号店が、神奈川・青葉台にオープンした。同店のコンセプトは「回転寿司以上のクオリティで、板前寿司以下の価格」というもので、フランチャイズチェーン(FC)化を念頭に置いているという。

 ちなみに、グループ店の蕎麦ダイニング「じねんじょ庵」の1号店もまた、青葉台にある。ほかにも、「串カツ田中」の1号店は東京・豪徳寺にあるなど、全国チェーンとなった飲食店の1号店は、都心から少し外れた絶妙な立地であることが多い。

 青葉台といえば、都会でも田舎でもないベッドタウンというイメージが強いが、なぜ1号店の出店場所として選ばれたのか。「寿司 あおい」の責任者、丸山晃氏は次のように語る。

「東急青葉台駅は乗降客数10万人を超え、就業者数も多く、住宅街が広がっているので大きな商圏といえます。持ち家が多いなど高所得者の比率が高い地域で、流行よりも本質を重んじ、評価が非常に厳しい。その半面、こだわりや品質を認めていただければ、長く愛されると感じています。感度の高い方が多い“ごまかしのきかないエリア”に出店することで、早期にブランドの優劣が判明するため、店舗改善も短期間で行うことができ、スピード感のあるモデルづくりがしやすくなると考えます」(丸山氏)

 また、青葉台は競合店が少なく、寿司との親和性が高い高年齢層の比率が高い点も、決め手のひとつとなったそうだ。さらに、商圏が大きいわりに店舗の賃料を低く抑えられるため、この地で繁盛店をつくることができれば、都心近郊の近似商圏にも展開できるとの考えがあったという。いわば、青葉台をテストマーケティングに最適な場所ととらえているということだ。

1号店の出店戦略の3つのポイント

 では、業界全体の傾向としてはどうなのか。居抜き店舗の紹介、フランチャイズ関連の情報提供、融資の支援、内装デザインなど、店舗経営者に向けて開業のトータルサポートを手がけるM&Aオークション・マーケティング部の山瀬智彦氏によると、チェーン展開のベースとなる1号店の出店戦略は、大きく3つに分けられるという。

「ひとつ目は、ターゲット顧客を取り込めそうな物件・場所かどうかということです。年齢層や性別だけでなく、職場の同僚と来るのか、ファミリーで来るのかなど、利用シーンや予算も細かく定めて、顧客の来店が見込める場所を選定します」(山瀬氏)

 同じ寿司業態でも、都心を中心に展開する「すしざんまい」は単価が高く、サラリーマンや観光客などの利用が多い。一方、郊外を中心に展開する「スシロー」や「かっぱ寿司」はお手頃価格が売りで、ファミリー層の利用が中心で車での来店が多いため、郊外・駐車場付きの80~100坪の大型店舗が主だ。このように、ターゲットによって出店エリアも物件もがらりと変わってくるため、単純に業態でくくるのは難しいという。

「2つ目は、経営の再現性です。飲食店がチェーン展開する場合、基本的には加盟者を募るフランチャイズ形式となりますが、その際、既存店舗と同等の条件で成功が見込めるような出店場所を見つけることがカギとなります。

 オペレーションなど店の中のことはある程度コントロールが利きますが、周辺の交通量や商圏といった要素は変えられないので、やはり出店場所が重要です。個人店であれば店主の工夫次第で来客を増やすことも可能かもしれませんが、チェーン店で個人技に頼りすぎると、無理が生じてしまいます」(同)

ラーメン店に1階の路面店が多い理由

 そして、3つ目のポイントが出店スピードだという。100店舗を目指すのか、1000店舗を目指すのか、ゴールの規模が大きければ大きいほど、都心部や一等地でなくても通用する業態づくりが重要になってくる。

「1店舗目から都心の一等地に出店して繁盛したとしても、好立地の物件は数が限られるため、2店舗以降が見つかりにくい。また、加盟を検討している地方の経営者が都心の店舗を視察に来たときに『東京の一等地だから儲かっている』と思われては、先に進みません。その点では、各駅停車しか停まらないような、のどかな場所で採算が取れている店のほうが地元に置き換えてイメージしやすく、出店の意思決定につながりやすいといえます」(同)

 郊外やローカルな場所での成功例が、FC展開の後押しとなるようだ。また、立地のほかに物件の条件によっても、出店スピードが左右されるという。たとえば、ラーメン店は1階の路面店が多いが、焼肉店や居酒屋などは、ほかの階に分散している。これは「来店動機の違い」が関係しているそうだ。

ラーメン店のように通りすがりに見かけて衝動的に入るような店は1階の路面店のほうが有利ですが、物件数が限られています。逆にいえば、2階以上の空中階や地下でも、目的を持って来店いただけるような業態づくり・物件選びをしたほうが、出店の余地が広がります。これは、飲食店以外にも共通して言えることです」(同)

 ここ数年は飲食店の寿命がどんどん短くなり、出店スピードはシビアな状況だという。

「ブームに陰りが見え始めると売り上げは落ちていき、以前なら10~15年続いていた業態も、そう長くは続かなくなってきています。平均的な飲食チェーンが投資を回収し終えるまでに5~7年かかることを考えれば、早めに店舗展開しておくのが吉です」(同)

 また、人気ブランドに加盟の申し込みが殺到し、契約を結んだものの、物件が見つかりにくいケースもあるという。焦って本来の狙いとはズレた場所に出店すると、余計なリスクになりかねない。

「いくら大元の店が大成功していても、後に続く物件が見つからなければ、そこでチェーンとしての成長は止まります」(同)

 味やサービスはもちろん、飲食店出店戦略や物件選定が命なのかもしれない。そう考えると、見慣れた飲食チェーンの看板も少し違って見えてきそうだ。

(文=松嶋千春/清談社)

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せいだんしゃ/紙媒体、WEBメディアの企画、編集、原稿執筆などを手がける編集プロダクション。特徴はオフィスに猫が4匹いること。
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