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成馬零一「ドラマ探訪記」

朝ドラ『エール』は“遊びすぎ”なのか?常識破りの挑戦と弱点…『あまちゃん』の残像

文=成馬零一/ライター、ドラマ評論家
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NHK連続テレビ小説『エール』」より

 連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『エール』(NHK)の放送が、1クール(3カ月)がたち、折り返し地点に入った。

 昭和を代表する作曲家・古関裕而とその妻・金子をモデルに、作曲家の青年・古山裕一(窪田正孝)と妻・音(二階堂ふみ)夫婦の半生を描いた本作は、朝ドラとしてさまざまな新しい挑戦に挑んだ意欲作だ。

 まず、誰もが驚いたのが第1話の冒頭。「紀元前1万年」の原始時代から始まった本作は、途中でフラッシュモブが挟まるといったバラエティ・テイストで話が進んでいく。よく言うと、新しい挑戦に満ちていて華やかで斬新。悪く言うと、作り手の自己満足で何をやっているのかわからないため、視聴者は置いてけぼり。

 おそらく物語のクライマックスになるであろう1964年の東京オリンピックの開会式を直前に控えた裕一と音の姿を描いた後、第2話から裕一の幼少期となる明治時代末期へと時間が遡っていく。

“異例の朝ドラ”の挑戦と弱点

 男性主人公、全編4K撮影、週5日(月~金)放送(土曜はバナナマンの日村勇紀がナビゲートする総集編を放送)。さまざまな新しい挑戦が試みられている本作だが、今までの朝ドラの印象と大きく違うのは、中心にあるのが脚本ではなく演出(見せ方)だからだろう。

 大胆な第1話はその宣言であり、このドラマが、チーフ演出で脚本にもクレジットされている吉田照幸の作品であることの証明だと言える。『疾風ロンド』『探偵はBARにいる3』といった映画の監督としても知られる吉田は『サラリーマンNEO』(NHK)や『となりのシムラ』(同)といったコントバラエティの演出として知られており、朝ドラでは『あまちゃん』に参加している。

 古田新太、薬師丸ひろ子といった『あまちゃん』に馴染みのある俳優が出演しており、音楽業界を舞台にしているため過去の名曲が節々でかかるというミュージカル&コントバラエティ的な演出が多用されていることからしても、『エール』は『あまちゃん』の影響が強く感じられる朝ドラだ。

 しかし、『あまちゃん』が宮藤官九郎という脚本家の物語と世界観が基調にあり、そこに演出や役者の演技が上乗せされていたのに対し、『エール』は演出や役者の演技のおもしろさが先行するあまり、脚本がとにかく弱い。

 第1話の最後のスタッフロールには脚本というクレジットはなく、「原作 林宏司」と記載されている。当初、林は『エール』の脚本家として発表されていたのだが、昨年末に突然降板。

 現在は、吉田も含めた3人(清水友佳子、嶋田うれ葉)が週ごとに脚本を書くというリレー形式となっている。これは、朝ドラはもちろんのこと、脚本家の単独執筆がいまだに多い日本のテレビドラマでは珍しいことであり、アニメなど複数の脚本家が参加する場合は、全体を統括するシリーズ構成が置かれているものだ。

 もしかしたら吉田がその役割を担当しているのかもしれないが、メインライターという役職がいないことが、良い意味でも悪い意味でも『エール』を特徴づけている。

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