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桶谷 功「インサイト思考 ~人の気持ちをひもとくマーケティング」

社員の能力開発費、日本企業は米企業の20分の1…社員教育に莫大な投資する外資系企業

文=桶谷功/株式会社インサイト代表取締役
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 今までの日本企業では、自社という「会社」の社員として就職させ、いろいろな仕事をさせてきました。自社で使い勝手がよい人材を育成する、逆に言えば他社では通用しないので囲い込みができる教育です。

 ジョブ型では、特定の「職務」を果たすために、専門性をもった人を必要としますが、今までの日本企業は、社員のスキルを高める教育をおざなりにしてきたのです。

マーケティングはスキルそのもの 学習と訓練が欠かせない

 日本を代表するような、消費者向けの事業を営んでいる大企業のマーケティング部門でも、人によってスキルが大きくばらついています。考え方も属人的で、体系だったマーケティング戦略理論やブランド戦略理論・実践方法を構築していないところが目立ちます。また、独特の考え方を持つのは良いことですが、基本となる世界共通のマーケティング理論とあまりにかけ離れていて、独自性というより自己流としか思えないところも多いのが実情です。

 世界に通用するマーケティング・スキルを身に着けるという観点でいえば、P&Gやユニリーバなどのマーケティング部門で新卒後3年間教育を受けるほうが、日本企業に20年間在籍しているよりずっとスキルが身につく、というのが正直な印象です。

 実際、私が在籍していた外資系広告会社でも、P&Gからの転職者は基本的なスキルを身に着けているので、すぐ実務で稼働できますが、日本企業からの転職者はマーケティング部門で実績のあった優秀な人でも、基本的なスキルを一から学び直してもらう必要がありました。

 日本では「MBAホルダー」を「頭でっかちで使えない」などと揶揄するのをよく耳にします。たしかに、理論的な学習が先行し、現場での実践経験がともなっていないかもしれません。しかし、多くの場合、上司が勉強不足で、自分の知らない知識や理論を振りかざされるのを敬遠しているだけというのが実情ではないでしょうか。

 これは、最新のUX(ユーザー体験)やサービスデザインなどの領域でも当てはまります。モノからコトへ、消費から体験へ、ビジネスモデルの変革を唱える企業は多いですが、それを実現するための知識やスキルを持ち、さらに勉強をし続けている人は圧倒的に若い世代に多い。逆に、それらの概念を理解できずに、ボトルネックになったり抵抗勢力になってしまったりする年長の中間管理職層が少なからず存在します。

 多くの人が経験した事例でいえば、今回のコロナで一気に普及した「オンライン会議」。年齢的に若くても役職なしでも、オンラインでの操作方法や会議の進め方などの知識やスキルがある人にどんどん教えてもらう。そういう風土がある企業はスムーズに運営できます。反対に、役職が上の人が「仕事は、そういうもんじゃない」などとテレワークに抵抗を示したり、下に教えてもらうという度量をもっていない人が上にいたりする組織は悲劇を招きます。

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