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藤和彦「日本と世界の先を読む」

米国、マスク着用是非が政治問題化…コロナで国民が分断、BLM運動の過激化で社会混迷

文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員
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米国で文化大革命のような悪夢再来か

 BLM運動が世界全体に広がっている現状を目にすると、「イデオロギーの亡霊が21世紀に復活した」との思いが頭をよぎる。 BLM運動のニューヨーク地区責任者であるホーク・ニューサム氏は6月24日、FOXニュースに出演し、「米国が真の変革に向けて行動を起こさなければ現在のシステムを焼き払う用意がある」と発言した。「人々が破壊行為を始めたらすぐに警官を解雇できるなんて、この国は暴力という声しか聞かないのか。この国は暴力の上に築かれている」とニューサム氏は考えているからである。

 確かに米国では自衛のため武装は憲法で保障され、「アメリカ人らしい行為」として称賛される。米国の外交も相手の国に攻め込んで、指導者を好みの人物に差し替えるのが常套手段である。暴力による現状改革を肯定する声が聞かれるようになったのは、米国の人々が自らの民主社会の正統性に疑念を抱き始めている証左である。

 事態はさらに深刻化する可能性がある。BLMの活動家でもある作家のショーン・キング氏は6月22日、「パレスチナで生まれたイエスは白人であるはずはない。白人姿のイエス・キリスト像は『白人至上主義』の表れであり、取り壊すべきだ」とツイッター上に投稿した。BLM運動の参加者は全米各地で奴隷制度の加担者だとして歴史上の人物の銅像を引きずり下ろし、記念碑に落書きすることで積年の恨みを晴らしているが、「このような暴挙は行きすぎである。BLMのメンバーは、過去に毛沢東によって動員された紅衛兵が中国の伝統文化を破壊したように、米国の文化と精神を壊そうとしている」とする懸念の声が黒人サイドからも上がっている(6月25日付大紀元)。

 ニューヨーク連邦準備銀行が5月4日に発表した研究論文によれば、1932年から33年にドイツで実施された総選挙で、スペイン風邪の死亡率が高かった地域でヒトラーが率いるナチ党に対する得票率が高かったという相関関係があったことが明らかになっている。当時のドイツではスペイン風邪で約29万人が命を落としたが、死の不安というトラウマを抱えた人々は、絶望的な現状を強権的な政治手法で変革することに魅力を感じてしまったのかもしれない。

 米国の新型コロナウイルスによる死者数は13万人を超え、世界第1位である。国難ともいえる事態に政治がリーダーシップを発揮できなければ、米国で今後「文化大革命」のような悪夢が生じてしまうのではないだろうか。

(文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員)

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