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HISの危機、海外ツアー99%減で赤字転落…店舗約3割閉鎖、ボーナス支給なし

文=編集部
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 3月に20年10月期通期の最終損益を11億円の赤字見通しに引き下げたが、上期に想定を超える赤字となったことを受けて、通期予想は「未定」。売上高は7750億円、営業利益は17億円と予想していたが、これらも「未定」とした。

海外旅行が全売上の63%と圧倒的

 澤田社長が見据えているのは、世界の旅行需要の取り込みだ。中国や東南アジアなどで所得が増え、海外旅行を楽しむ人が増加している。人口減少が進む日本とはまったく逆だ。海外の旅行者を取り込むために最も注力したのは、海外企業のM&A(合併・買収)だった。17年にたて続けに3件買収した。

 主に欧州からカナダを訪れる旅行者向けに現地ツアーを販売するジョンビューカナダ(カナダ)、欧州旅行に強くアジアに多くの顧客を持つグループ・ミキ・ホールディングス(香港)の買収が具体例だ。地元の情報に通じているかどうかがツアー商品の質を左右する。現地を知り尽くす企業を買収し、アジアの旅行者向けのオプショナルツアーの販売を強化することにした。

 さらにグリーンワールドホテルズ(台湾)を買収した。台北市内に16軒のホテルをもち総客室数1706室。16軒のうち1軒を、ロボットがスタッフとして働く「変なホテル」に改装した。グリーンワールドホテルズの買収を機に中国語圏へのホテル事業の進出をはかるほか、東南アジアやオセアニアなどでもホテルの展開を検討。21年度中に国内外で低料金がウリの「変なホテル」を100軒程度展開したい考えだ。

 ホテル事業を強化すべく、19年に不動産・ホテル業のユニゾホールディングスのTOB(株式公開買い付け)を仕掛けた。これは不成立に終わり買収を断念した。

 海外の旅行・ホテル会社を傘下に収めた結果、全体の売上高のうち国内旅行と訪日旅行を除いた海外旅行関連が全体に占める割合を単純計算すると、19年10月期は78%を占めた。なかでも海外旅行は63%と圧倒的だ。国内旅行は1割にも満たない。

 HISの生命線の海外旅行は、いつごろ回復するのだろうか。出入国制限の緩和に向けた動きがあるが、あくまでビジネス渡航の話だ。HISが期待する観光旅行の解禁はもっと先になる。国際航空運送協会は「世界の国際線の旅客需要が回復するのは24年までかかる」と予測している。

 海外事業の不振が業績を直撃するのはこれからだ。20年10月期決算が歴史的な落ち込みを記録するのは避けられないだろう。財務内容の改善のために、保有する海外子会社の株式の売却に動くことになるかもしれない。HISのM&A戦略は、買収から売却へ180度変更されることになるかもしれない。

(文=編集部)

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