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平林亮子と徳光啓子の「女性公認会計士コンビが教える、今さら聞けない身近な税金の話」

年間数十万円も節税できる「エンジェル税制」“適用外”にならないための注意点!

文=平林亮子/公認会計士、アールパートナーズ代表、徳光啓子/公認会計士
年間数十万円も節税できる「エンジェル税制」“適用外”にならないための注意点!の画像1
「Getty Images」より

亮子「サラリーマンでも起業しやすくなった今の時代。エンジェル税制を知って出資を受けやすくすることに意味はあるよね」

啓子「どれくらいの出資を受けたいか、会社の規模にもよりますけれど、エンジェル税制の準備をしてくれるという経営者の姿勢も大切ですよね」

誰かが持っている株を購入してもエンジェル税制の適用はない

 企業に投資する方法はいくつかありますが、誰かが持っていた株を購入した場合には、エンジェル税制の対象にはなりません。エンジェル税制の適用を受けるためには、(1)要件に当てはまる企業が、(2)新規に発行する株を引き受ける形で出資し、(3)必要な資料を添えて確定申告をしなくてはなりません。

 つまり、投資しようとする企業が一定の要件に当てはまっていること(企業要件)、投資の方法が一定の要件に当てはまっていること(個人投資家要件)、そして、それらを証明するための書類を添えて確定申告をすることが必要になります。

企業要件を満たすかどうかは企業が地方自治体に確認する

 投資しようとする企業がエンジェル税制の要件に当てはまるかどうか、エンジェル投資家側でチェックするのは難しいと思います。要件は下記の通りですが、これを外部から調査したり判断したりするのは難しいでしょう。

<企業要件>

1.特定の株主グループからの投資の合計が6分の5(約83%)を超えないこと

2.大規模法人グループの所有に属さないこと

3.未上場・未登録の株式会社で、風俗営業等に該当しないこと

4.中小企業であること

5.企業の設立経過年数に応じた要件を満たすこと(優遇措置AとBで異なる)

 エンジェル税制の対象になるかどうか、企業が自ら地方自治体に確認申請し、地方自治体が確認することになります。要件に当てはまれば、地方自治体から企業へ確認書が交付されます。そしてエンジェル投資家は、企業から確認書を交付してもらいます。そのため、もし知人の会社や非上場企業に出資をすることになったら、エンジェル税制の対象になるか、エンジェル税制の対象企業になるようにできないのか、を問い合わせてみることをお勧めします。

 なお、エンジェル税制の要件を満たす企業かどうか、事前に確認することができる制度もあります。これを「事前確認制度」といい、エンジェル税制の要件を満たすことを事前に確認された企業名などが、中小企業庁のホームぺージで公表されています。企業は投資家に対してエンジェル税制適用が可能な企業であることを説明できますので、これによって、より円滑な資金調達が期待できるというわけです。ただし、事前確認制度を利用した企業であっても、確認書の交付が省略されるわけではありませんので注意してくださいね。

エンジェル税制は金銭の払込のみ対象となる

 個人投資家が満たす要件は2つあります。1つは、金銭の払い込みにより、対象企業の株式を取得していること。誰かが持っていた株を購入した場合や、金銭以外となる株式や建物・土地などによる出資(現物出資)の場合、エンジェル税制の対象にはなりません。新たに発行される株に対して金銭の払込による出資で応じた場合のみ、優遇措置があります。

 もう1つは、対象企業が同族会社である場合、所有割合(株式数および議決権数)の大きいものから第3位までの株主(およびその親族や関係会社等)の所有割合を順に加算し、その割合がはじめて50%超になる時における株主に属していないこと。ざっくりいえば、投資する人が投資企業の大株主の親族などの関係者ではない、ということです。エンジェル税制は、あくまでも外部の投資家が、企業を応援しようとする場合に優遇を受けられる制度だというわけです。

 企業要件と投資家の要件すべてを満たすかは専門的な知識も必要なので、実際に投資する際には投資しようとする企業にきちんと確認し、事前確認制度を利用してもらうよう促してみるのも良いでしょう。

確定申告を忘れずに

 エンジェル税制を利用できる場合には、確定申告を忘れずに行いましょう。エンジェル税制は、確定申告をしなければ適用されません。企業と出資に関する契約を結び、エンジェル税制に関する確認書を企業から入手しましょう。証券会社を通じた上場企業への投資のみならず、非上場企業に投資する機会も意外とあるものです。友人の会社を応援する投資はもちろんのこと、近年ではクラウドファンディングなども活発に行われるようになってきています。自分の投資によってその企業が素晴らしい商品やサービスを生み出し、社会で活躍する姿を想像するとわくわくしませんか?

 そして、もしその投資がエンジェル税制の要件を満たせば、節税にもなります。新しい企業を応援する際にはぜひ思い出して、企業とともに活用してほしい制度です。

亮子「さて、突然ですが、本連載は、48回目の今回を持って終了させていただくことになりました」

啓子「長いようで短い48回でした。みなさま、長い間、お読みいただき、ありがとうございました!」

亮子「この先は、どうなることやら」

啓子「もしかすると、新たな展開があるかも!?」

亮子&啓子「この連載が少しでもみなさまのお役に立つものとなっていましたら嬉しいです」

(文=平林亮子/公認会計士、アールパートナーズ代表、徳光啓子/公認会計士)

平林亮子/公認会計士、アールパートナーズ代表

平林亮子/公認会計士、アールパートナーズ代表

1975年千葉県生まれ。お茶の水女子大学文教育学部地理学科出身。
企業やプロジェクトのたち上げから経営全般に至るまで、あらゆる面から経営者をサポートしている。
また、女性プロフェッショナルに関するプロジェクト「SophiaNet」プロデューサーを務めるなど、経営サポートに必要な幅広いネットワークを持つ。
さらに、中央大学商学部客員講師として大学で教壇に立つなど、学校、ビジネススクール、各種セミナーなどで講義、講演も積極的に行っている。
『決算書を楽しもう!』 『「1年続ける」勉強法―どんな試験も無理なく合格!』(共にダイヤモンド社)、『相続はおそろしい (幻冬舎新書)』(幻冬舎新書)、『1日15分! 会計最速勉強法』(フォレスト出版)、『競わない生き方』 (ワニブックスPLUS新書)、『5人の女神があなたを救う! ゼロから会社をつくる方法』(税務経理協会)など、著書多数。
合同会社アールパートナーズ

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