カカクコム、クックパッドを上場させた投資家
穐田誉輝氏は青山学院大学経済学部卒。ベンチャーキャピタル大手の日本合同ファイナンス(現・ジャフコ)を経て独立。99年、ベンチャー投資を行うアイシービーを設立した。価格比較サイト価格.comを運営するカカクコムに出資、2001年、社長に就いた。カムコムは03年に東証マザーズ、05年東証1部に上場した。上場という使命を果たしたことで穐田氏は06年に社長を退いた。カカクコムは価格比較サイトとグルメサイト「食べログ」を2本柱に急成長。ネット企業の“勝ち組”の1社と評された。
次に穐田氏が投資したのがクックパッド。創業者の佐野陽光氏は慶應義塾大学環境情報学部卒。97年10月、コイン(現クックパッド)を設立、料理レシピの検索・投稿サイトを立ち上げた。主婦たちが自分でつくった料理のレシピを投稿するサイトとして人気を集めた。
クックパッドは創業後8年間営業赤字が続き、経営は大苦戦していた。このとき、創業間もないベンチャー企業に資金を提供するエンジェルとして穐田氏が登場する。ベンチャーキャピタリストとして07年12月、クックパッドに出資、社外取締役に就任。上場を指南し、09年7月、東証マザーズに上場(11年に東証1部に指定替え)。穐田氏は14.78%を出資する第2位の大株主となった。
佐野氏は12年3月、穐田氏を後継社長に指名し、佐野氏は料理レシピサイトを米国に広げるため渡米。穐田氏は時価総額経営を進め、クックパッドは急成長をたどることとなる。
クックパッドの創業者と多角化を巡り喧嘩別れ
投資家である穐田氏にはレシピサイトに対する思い入れはなかった。入山章栄・早稲田大学ビジネススクール准教授との対談(15年9月25日付「ダイヤモンド・オンライン」記事)でこう語っている。
<クックパッドはまだ“一発屋芸人”レベルだ。時流を捉えて一度大ヒットすると、後を営業しながら、しっかり稼ぐ。一度当ると意外に長持ちするな、みたいな(笑)>
<もっと便利なものができたら(クックパッドは)なくなると思ってます。Facebookの料理投稿で充分とか、YouTubeの料理動画で良いじゃんとなれば、それでお終いです>
レシピサイトで食えなくなることに備え、穐田氏はM&A(合併・買収)に打って出る。米国、スペイン、インドネシア、レバノンなど海外レシピサイトを買収。スーパーの特売情報の提供や食材の定期宅配などEC関連、電子書籍のイーブック、子育て支援の日本テクノ、結婚式口コミサイトのみんなのウエディングなど新規分野のM&Aを次々と進めた。