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携帯電話基地局、周辺住民の「がん死亡率」高く…5G、一部欧州で中止、人体へ影響懸念

文=黒薮哲哉/「メディア黒書」主宰者
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 欧米でも各国の政府が定めている規制値は、日本とあまり変わらないほど緩やかな傾向があるが、地方自治体などが独自の推奨値を設定したり、条例を制定するなどして、基地局の設置をある程度規制している。どこにでも自由に設置することはできない。基地局の撤去を命じる判決も下されている。

 マイクロ波をめぐる安全性の研究は、大きく2つに分類できる。マイクロ波による人体への影響は熱作用だけと考える研究者群と、それ以外の要素も考慮すべきであるとする研究者群である。「それ以外の要素」は総称して「非熱作用」と呼ばれ、その代表格は遺伝子毒性である。遺伝子を傷つけて、がんなどを発症するリスクがあるとする説である。

 アメリカの国立環境衛生科学研究所のNTP(米国国家毒性プログラム)の最終報告(2018年)は、マイクロ波によって「雄のラットが心臓腫瘍を発症したという明確な証拠がある」(電磁界情報センター)などと結論づけた。これは携帯電話端末を想定した実験であるが、だからといって基地局からの電磁波が安全という保証はない。というのも電磁波自体は弱くても、基地局周辺の住民は1日に24時間、5年、10年、15年と長期にわたり電磁波を被曝し続けるからだ。

基地局からの距離とがんによる死亡を検証した疫学調査

 基地局周辺にがん罹患者が多いという疫学調査は複数ある。たとえば11年にブラジルのミナス・メソディスト大学のドーデ教授らが実施した調査である。これは1996年から2006年まで、ベロオリゾンテ市においてがんで死亡した7191人の住民の居住地点と基地局との距離関係などを調査したものである(出典:Science of the Total Environment)。基礎資料として使われたのは、次の3点である。

・市当局が管理している、がんによる死亡データ

・国の電波局が保管している携帯基地局のデータ

・国政調査のデータ

 対象の基地局数は856基。電力密度は40.78μW/平方センチメートル~0.04μW/平方センチメートルである。結論を先に言えば、基地局に近いほど、また基地局の設置数が多い地区ほど、がんによる死亡率が高い。下記のデータは、調査対象の7191人の住居と基地局の距離を分類したものである。

※基地局からの距離:がん死亡者数

・100m以内:3569人

・200 m以内:4977人

・300 m以内:5950 人

・400 m以内:6432 人

・500 m以内:6724 人

・600 m以内:6869人

・700 m以内:6947人

・800 m以内:6989人

・900 m以内:7000人

・1000 m以内:7044人

(その他、基地局から1000 mより外のケースが147人)

 基地局に近いほど、がんによる死亡率が高い。基地局から100メートル以内に、調査対象となった7191例の約半分が位置づけられたのである。また、地域別の死亡率についていえば、がんによる死亡率が最も高かったのは、中央南区である。この地区には市全体の基地局の39.6%(06年の時点)が集中していた。逆に最も低かったのはバレイロ区で、基地局の設置割合は全体のわずか5.37%だった。

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