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日立、コロナ禍でも今期利益3.5倍の3千億円に…“事業ポートフォリオ組み換え”が奏功

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 それよりも、経済環境が良好な場合は、経営者がITなどを中心に成長期待の高い分野に経営資源を再配分したほうが成長性は高まる。リーマンショック後、日立は世界経済のIT化に対応するために、製造業を中心としたコングロマリット経営よりもソフトウェア分野を中心に経営資源を再配分し、成長性を高めようとした。新型コロナショックが発生する中でも日立が重視する5つの事業分野が堅調な業績を示したことを考えると、これまでの日立経営陣の選択と集中へのコミットメントは大きな成果を発揮した。

重要性増す安定性と成長性のバランス

 2021年3月期の業績予想に関して、日立は連結ベースの最終利益が3350億円と前期から3.5倍増加するとの見通しを示した。同社が収益の安定性と成長性を重視して選択と集中を進めたことによって、経営陣はしっかりとした業績予想を示すことができている。今後、日立は計画を着実に実現しなければならない。

 そのために、日立は事業の安定性と成長性の両面から事業ポートフォリオのさらなる入れ替えを進めることとなるだろう。それは、短期と中長期の時間軸に分けて考えるとよい。

 短期的な世界経済の展開を考えると、先行きはかなり読みづらい。世界経済が新型コロナウイルスの影響から完全に立ち直るためには、効果のあるワクチンや医薬品の開発が欠かせない。早ければ9月に英アストラゼネカがワクチンの実用化と供給の開始を目指している。

 ただし、急ピッチでワクチン開発が進められているため、どの程度の効果があるかなど不確実な部分は多い。当面、各国の企業は新型コロナウイルスの感染が続くことを念頭に事業を行わなければならないだろう。状況によっては、感染が一段と深刻化し、世界経済により大きな下押し圧力がかかる展開も想定される。そうした展開を考えると、日立はさらなる事業の安定性と成長性の強化に注力しなければならないそれは、コングロマリット経営の重要性が高まっていることと言い換えられる。

 中長期的に考えると、いずれワクチンの実用化が進むなどして、世界経済の成長率は時間をかけてコロナ前の水準を回復するだろう。重要なことは、コロナショックが世界を大きく変えていることだ。コロナショックによってテレワークの推進やオンラインの診療など、デジタル化が急速に進んでいる。それによって世界全体で新しい働き方や生き方が見出された。もう、後戻りはできない。世界経済の活動が正常化に向かうとともにIT先端分野を中心に成長への期待は高まるだろう。その場合、日立は再度、選択と集中に注力し、成長性の高い事業を育成しなければならない。

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