ビジネスパーソン向け人気連載|ビジネスジャーナル/Business Journal
「攻撃者との同一視」が最も深刻な形で現れるのは、親子の間だろう。子どもの頃に親から虐待を受け、「自分は理不尽な目に遭い、つらい思いをした」という被害者意識が強いほど、自分と同じような体験を他の誰かに味わわせようとする。いや、より正確には、自分がつらい思いをした体験を他の誰かに味わわせることによってしか、その体験を乗り越えられないというべきだろう。
しかも、「攻撃者との同一視」は無意識のメカニズムなので、かつての被害者が知らず知らずのうちに加害者になってしまう。その結果、虐待の連鎖が起きる。こうした悲劇を繰り返さないためには、子育てを親だけの責任にするのではなく、社会全体で子どもを育てていくという視点が必要なのではないだろうか。
(文=片田珠美/精神科医)
参考文献
片田珠美『子どもを攻撃せずにはいられない親』PHP新書、2019年
アンナ・フロイト『自我と防衛』外林大作訳 誠信書房、1958年