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南清貴「すぐにできる、正しい食、間違った食」

農薬が子供の発達障害を引き起こす可能性も…EUで禁止の危険な農薬が野放しの日本

文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事
農薬が子供の発達障害を引き起こす可能性も…EUで禁止の危険な農薬が野放しの日本の画像1
Boom sprayers.

 6月3日掲載の本連載記事『今こそ、農業従事者を増やすべきでは?危機的に低い食料自給率改善と失業者救済の提言』で筆者は、COVID(コビット)-19の一連の災禍によって職を失った方々を政府が支援して農業に就いていただいたらどうかと提案しましたが、それを実際に行っている国がありました。フランスです。

 フランスでは、もうすでに20万人もの方が、農水大臣の呼びかけに応じて農産物の収穫作業などに携わっているそうです。どうして、このような柔軟さが日本の省庁にないのか、筆者にはわかりません。いらぬ時間ばかりかけて、いざという時の実行力がないということはマスクの一件でも明らかになりましたが、そこに私たちが支払った税金が使われていると思うと、いささか腹立たしい気分になります。

農薬が子供の発達障害を引き起こす可能性も…EUで禁止の危険な農薬が野放しの日本の画像2 フランスは、言わずと知れた農業国です。国土面積は日本の約1.5倍程度ですが、その農地面積は国土全体の52.5%を占めています。ちなみに、日本の農地面積は12%です。食料自給率も、日本が37%であるのに対し、フランスは129%です。人口は6600万人といわれていますが、国内総生産(GDP)は2兆8064億ドルで世界第5位。人口が1億2593万人(令和2年6月1日現在<概算値>総務省統計局調べ)の日本のGDPが4兆8985億ドル(世界第3位)であることを考え合わせると、農業国といえども、いかに効率よく生産性を上げているかということでもあります。

 どう見ても農業を大切に考えているとは言いがたい日本が、これからどうなっていくのかについては、筆者のみならず心配されている方が多いのではないかと思います。

 そもそも、火山国である日本の国土は、そのほとんどが火山灰土で覆われています。火山灰土は、火山が噴火した時に空中に放出された灰、砂、礫などが地表に落下して形成されるものですが、火山活動が休止、または衰退することによって土壌生成が始まります。その土壌生成の時間の長短によって、性質もまた異なります。一般的には、水はけが良く、耕うんが楽だといわれていますが、土壌が酸性に傾くという特徴もあります。そのために酸性矯正資材である石灰分を畑に入れたり、リン酸肥料を使ったりするのですが、それは施肥をしないと土壌が痩せてしまい、作物をつくることができなくなってしまうからです。

 本来であれば、腐植といって、植物が枯れたり倒れたりして、それが長い時間をかけて土に戻ったものと融合し、表層を覆うことが理想的なのですが、今やそれは時間的に、また物理的にも不可能です。したがって、それに準ずる「有機肥料」を入れるのが次善の策ということになります。筆者がオーガニックを推進しようと試みているのは、ここに根拠があります。

ネオニコチノイド系農薬を使用するリスク

 まったく肥料を使わずに農業を行う試みもあり、その努力を筆者は認めてはいますが、現実的ではないと考えるのは、日本の土壌では無施肥では限界がある、という理由からです。

 それでも、ネオニコチノイド系農薬を使うのとは、それこそ天と地ほどの差があります。これも再三にわたって申し上げてきましたが、EUなどでは使用禁止となっている農薬に対する規制が、我が国、日本では緩和されています。その影響はさまざまなかたちで表れていますが、国は認めようとはしません。

 ある研究によれば、子供の発達障害を引き起こす可能性があるともいわれています。ネオニコチノイド系農薬が、ミツバチの神経系に作用を及ぼし、死に至らしめるということが話題になったことがありましたが、その後はあまり語られなくなりました。

 筆者は岐阜県大垣市に住んでおり、住まいから数十歩ほど歩いたところには、小さな田んぼもあります。時期によっては時折、カエルの鳴き声も聞こえてくることもありますが、以前からこの地に住んでいる人に聞くと、その声は昔とは比ぶべくもなく小さくなったといいます。また、蝶や蜻蛉の数も圧倒的に減ったそうです。これも間違いなく農薬のせいでしょう。

 もし、COVID-19のことがきっかけとなって、農業に従事しようと考えている方がいらっしゃいましたら、ぜひオーガニック農業に取り組んでいただきたいというのが、筆者の願いです。

 最近読んだ『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治/新潮社)には衝撃を受けましたが、この本に書かれている子供たち、若者たちが抱える認知機能の弱さ、想像力の欠如、感情統制ができないこと、加えて身体的不器用さなどにも、間違いなく食事内容が影響しています。この本の中では、「軽度知的障害」が人口の14%にも上っていることや、脳機能と犯罪との関係、性犯罪者のことなども詳しく書かれていますが、その解決方法のひとつに食事のあり方が書かれていないことが、筆者としては片手落ちではないかと思っています。

 当然のことながら、食品添加物が大量に使われている加工食品の問題もありますが、農薬のことも考慮しなくてはならないと思うのです。農薬を使う方や売る方は無害を主張しますが、そんなことはありません。米生物学者のレイチェル・カーソンや、小説家の有吉佐和子を引き合いに出すまでもなく、そのことはすでに証明済みです。

 COVID-19は、私たちのライフスタイルを大きく変化させることになります。その変化をネガティブと捉えるのか、ポジティブなものとして受け入れ、積極的に取り入れていくのかは、私たち次第です。

 職を失ったことは一時的にネガティブなことではあるかもしれませんが、それをきっかけにして、その先の人生をどう思考し実現させていくのかは、私たち自身に課せられたミッションです。

 また、食事のあり方をもう一度考え直すということも、私たちが取り組むべき課題であると筆者は思っています。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)

南清貴

南清貴

フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会
代表理事。舞台演出の勉強の一環として整体を学んだことをきっかけに、体と食の関係の重要さに気づき、栄養学を徹底的に学ぶ。1995年、渋谷区代々木上原にオーガニックレストランの草分け「キヨズキッチン」を開業。2005年より「ナチュラルエイジング」というキーワードを打ち立て、全国のレストラン、カフェ、デリカテッセンなどの業態開発、企業内社員食堂や、クリニック、ホテル、スパなどのフードメニュー開発、講演活動などに力を注ぐ。最新の栄養学を料理の中心に据え、自然食やマクロビオティックとは一線を画した新しいタイプの創作料理を考案・提供し、業界やマスコミからも注目を浴びる。親しみある人柄に、著名人やモデル、医師、経営者などのファンも多い。

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