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ファミマ、伊藤忠商事“ほぼ完全子会社”化の真の理由…セブンに遠く及ばない“稼ぐ力”

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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ファミリーマートの店舗(「Wikipedia」より)

 ファミリーマートが伊藤忠商事の、ほぼ完全子会社になることが発表された。伊藤忠が5800億円を投じてTOB(株式公開買い付け)を実施する。完全子会社化後に伊藤忠はファミマ株式の4.9%分を全国農業協同組合連合会(JA全農)と農林中央金庫に譲渡する。ファミマを上場廃止にして経営の意思決定を迅速化するほか、ファミマに対する伊藤忠の関与を強め、新型コロナウイルスを機に不振にあえぐファミマのてこ入れを図る。

 コンビニエンスストア大手3社において、ファミマの失速が際立っている。コロナ禍において、ファミマの既存店売上高は競合と比べて大きく落ち込んでいる。ファミマは3月が前年同月比7.6%減、4月が14.8%減、5月が11%減、6月が8.2%減だった。一方、セブン-イレブン・ジャパンは3月が3.2%減、4月が5%減、5月が5.6%減、6月が1.0%増。ローソンは3月が5.2%減、4月が11.5%減、5月が10.2%減、6月が5.8%減。ファミマの落ち込みが際立っている。

 ファミマの落ち込みが大きいのは、都心部の店舗が多いためだ。外出自粛や在宅勤務の広がりなどで都心部の人口が減ったことが影響し、ファミマの2020年3~5月期連結決算は厳しいものとなった。売上高にあたる営業収益は前年同期比15.9%減の1117億円、純利益は71.5%減の57億円だった。大幅な減収減益だ。

 新型コロナの影響でファミマは業績が大きく悪化したわけだが、新型コロナの終息は見通しがつかない状況で、長期化すれば深刻な状況に陥りかねない。こうした懸念があり、上場廃止とほぼ完全子会社化により、伊藤忠が持つ経営資源をファミマに迅速かつ効率的に提供できる態勢を整える。それによりファミマの競争力を高め、業績回復を図りたい考えだ。

 これまで大手コンビニは積極的な規模拡大策により成長を果たしてきた。ファミマはM&A(合併・買収)を活用して規模を拡大。09年に「am/pm」のエーエム・ピーエム・ジャパンと、16年に「サークルK」「サンクス」のサークルKサンクスを傘下に収めるユニーグループ・ホールディングスと経営統合している。これによりファミマブランドの国内店舗数は1万8200店に達し、当時2位だったローソンを抜き去った。現在は少し減って1万6600店となっている。なお、セブンは2万900店、ローソンは1万4500店を展開している。

ファミマの“稼ぐ力”が落ちた理由

 こうして各社は成長を果たしてきたが、ただ、国内は飽和感が漂っており、出店による成長に限界が見えてきている。そのため、これからは、これまで以上に1店1店の収益力向上が重要となる。

 だが、ファミマはこの面で大きな懸念がある。19年度のファミマの日販(1店舗の1日当たり売上高)は52万8000円で前年度から2000円低下したのだ。一方、セブンは65万6000円で前年度から横ばい、ローソンは53万5000円と前年度(53万1000円)から大きく上昇している。ファミマだけが稼ぐ力が大きく低下している状況だ。

 なお、19年度は締め月が各社とも20年2月と新型コロナが本格化する前なので、19年度の日販は通常時の稼ぐ力を示していると考えていいだろう。ファミマは新型コロナに関係なく稼ぐ力が落ちているのだ。3社の日販の順位は長らくセブンがトップでローソンが2位、ファミマが3位となっているが、このままではファミマは万年3位から脱却することはできないだろう。

 ファミマの稼ぐ力が落ちているのは、商品力を高めきれていないことが大きい。セブンは圧倒的な知名度と商品力があるプライベートブランド(PB)「セブンプレミアム」を持っている。セブンの日販はファミマより12万円以上も高いが、この高い日販を支えているのがPBだ。セブンのPBは安定的な力を持っている。

 ローソンもPBが充実してきている。ヒット商品も多く生まれており、最近では19年3月に発売したスイーツ「バスチー」が代表的だ。バスチーは発売からわずか3日で100万個を販売。今年1月には累計4000万個に達する大ヒット商品となった。19年度の日販が高まったのも、バスチーの貢献が大きかったといえる。

 今年3月末に発売したスナックパイ「グーボ」もヒット商品となりそうだ。発売からわずか2日で販売個数が100万個を突破。バスチーは100万個を販売するのに3日かかったので、初速はグーボのほうが上だ。18年10月に発売した「悪魔のおにぎり」もヒット商品といえる。発売から2週間で300万個、1年間で5600万個をも販売した。このように最近のローソンにはヒット商品がたくさんある。

 一方、最近のファミマには、これらに匹敵するほどのヒット商品が見当たらない。18年11月に発売したスイーツ「スフレ・プリン」が今年2月に累計販売個数が1900万個を突破し、売れた商品といえるかもしれない。だが、バスチーや悪魔のおにぎりと比べると見劣りが否めない。

 こうした状況から、ファミマは商品力の向上が喫緊の課題といえる。そうしたなか、伊藤忠のほぼ完全子会社となるわけだが、それにより伊藤忠の経営資源をより効果的に活用できるようになる。それにより商品力の向上が期待できるだろう。また、JAグループとの提携を生かしてファミマの農畜産物などの品ぞろえの強化も期待できる。こうしてファミマは商品力を強化し、業績回復を図りたい考えだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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