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成馬零一「ドラマ探訪記」

火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』が“コロナ禍のラブコメ”として要注目の理由

文=成馬零一/ライター、ドラマ評論家
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火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』|TBSテレビ」より

 新型コロナウイルスの影響でストップしていた新作ドラマの放送が続々と再開されている。ほとんどのドラマが、春クールに放送予定だったものが夏クールにそのままスライドしているのだが、どの作品も序盤はコロナ禍が進む前に書かれた脚本をもとに撮影されているため、現在の我々が生きる「新しい日常」とはズレた異世界を観ているように感じてしまう。

 現実との誤差を無視して描き切るのか、誤差を修正して現代の日常に近づけるのかは作り手にとっては悩ましい問題である。そんな中、結果的に今の気分とマッチしている作品もある。

 TBS系の火曜ドラマ枠(夜10時放送)で放送されている『私の家政夫ナギサさん』がそうだ。物語の主人公は、製薬会社のMR(医療情報担当者)として働く相原メイ(多部未華子)。営業の仕事が忙しくて、部屋が散らかっているメイを心配した妹の福田唯(趣里)は、メイの28歳の誕生日に、唯が働く家事代行サービス会社のレジェンド家政夫・鴫野ナギサ(大森南朋)を派遣する。

 メイはチームリーダーに抜擢されるのだが、仕事に没頭するあまり心身を疲弊していく。そんなメイが、家政夫のナギサさんとの交流を通して自分を見つめ直していく姿が描かれている。

 小さいときのメイの夢は「おかあさん」だったが、母親の美登里(草刈民代)から否定され「男の子なんかには負けない、仕事ができる女性になるの」と教育された。そのため、「おかあさん」という言葉は彼女にとって「呪いの呪文の一つ」となっている。

 このあたりの仕事と恋愛をめぐる葛藤は、同枠で大ヒットした『逃げるは恥だが役に立つ』のテーマを引き継いだものだと思われる。男に負けないように働くメイと“おかあさん”のような家政夫・ナギサさんの対比で見せるジェンダーの反転は「多様性の時代」により深く踏み込んだものとなっている。

 シリアスな問題を扱っているが、物語のトーンは同枠の『恋はつづくよどこまでも』などに通じるラブコメテイストとなっており、ライバル会社の田所優太(瀬戸康史)と距離が縮まっていく恋愛ドラマの要素も健在。

 脚本には『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)の徳尾浩司が参加しており、近年流行っている“おじさんブーム”もナギサさんの描写を通してうまく取り込んでおり、全方位的に隙のない作品だと言えるだろう。

『ナギサさん』の物語に感銘を受けるワケ

 その手堅いつくりに「あざとさ」を感じないわけでもないが、それでもコロナ禍の現在、本作を評価したくなるのは「部屋の片づけ」を通して生き方を見つめ直すという物語のあり方に、深い感銘を受けたからだ。

 少し個人的な話になるが、コロナ禍になって筆者がまず考えたのは、自分の生活を見つめ直すことだった。昨年からスポーツジムに通い食生活も見直すようにはしていたのだが、まず一番に心身の健康を考えようと、以前にも増して考えるようになり、部屋の掃除を定期的に行うため、掃除機を買い替えた。

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