ビジネスパーソン向け人気連載|ビジネスジャーナル/Business Journal
定期的に片づけるようになって改めて気づいたのは、部屋が散らかるのは仕事やプライベートで疲弊しているときで、ストレスが澱のように積もっていくと、部屋もどんどん汚くなっていくということ。心に余裕があれば部屋の片づけに頭が回るようになるし、逆に部屋の掃除をすることで気分をうまく切り替えることもできる。
コロナ禍においては、部屋の空気の入れ替えや除菌ももちろん重要で、そういった一つひとつの小さな作業ができるかどうかに現在の精神状態が表れることが、掃除をすることでよくわかるようになった。そういった観点で観ると、物語冒頭のメイの部屋の散らかり具合は、かなりヤバい。
とはいえ、ドラマ自体の描写はコミカルで、物が多くて部屋が散らかっていても、床にほこりも髪の毛も落ちてないし、虫も湧いてない(もちろんドラマだから臭いもない)という“キレイな散らかり方”だ。
だから、実は描写としては、あまりリアリティはないのだが、逆に「汚れ方」がリアルだったらつらくて観ていられなかっただろう。その意味でも、火曜ドラマ特有のコミカルさがプラスに働いている。
おそらく、物語の題材自体はアメリカで流行っている「片づけコンサルタント」のこんまり(近藤麻理恵)ブームを当て込んでのものだろう。その意味でも戦略が見えすぎる作品なのだが、そうやって流行り物を的確に押さえていたからこそ、ほかのドラマに先駆けて、コロナ禍の現状にうまく対応できているのかもしれない。
第2話には、仕事先からマンションに帰ってくるメイがマスクを着用している描写もちゃんとあり、“現在の物語”をつくろうという意思を作り手が持っていることがわかって、安心する。
基本的には誰でも気軽に楽しむことができるラブコメだが、肩に力が入った社会派ドラマやリモート撮影を強調した実験作ではなく、日常に溶け込んだ普通のドラマだからこそ、知らず知らずのうちに伝わるメッセージというものがあるはずだ。
まだ始まったばかりだが、コロナ禍のラブコメとしても要注目である。
(文=成馬零一/ライター、ドラマ評論家)