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ツルハ、インバウンド売上「800億円」消失でも全体売上増の“3つの施策”…強かな経営

文=編集部
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ツルハの店舗(「Wikipedia」より/アラツク)

 6月23日、東京株式市場でツルハホールディングス(HD)株が一時、前日比5%安の1万5080円まで下げ、約1カ月ぶりの安値を付けた。2021年5月期は訪日外国人(インバウンド)向けの販売がゼロという想定で、連結純利益が20年5月期比3%減になる見通しを、前日の取引終了後に明らかにしていた。市場予想の平均(4%増)を下回ったことで失望売りが膨らんだ。終値は3%安の1万5510円。売買代金は前日比5割増えた。

 7月1日、ツルハ株は反発した。一時、前日比360円(2.4%)高の1万5210円をつけた。6月30日に発表した6月度の既存店売上高が前年同月比7.3%増となったからだ。5月(4.1%増)に比べて伸び率がさらに拡大した。新型コロナウイルスの影響で外出をなるべく控える傾向が続くなか、日用品や食品が引き続き売上を伸ばした。特別定額給付金の支給開始による恩恵があったとの見方もある。

 インバウンド消費が消えたにもかかわらず売上が増えたことで、それを好感した買いが入った。

20年5月期はマスクや「巣ごもり」商品が伸びた

 20年5月期の連結決算の売上高は19年同期比7.5%増の8410億円、営業利益は7.6%増の450億円、純利益は12.4%増の278億円だった。新型コロナウイルスの感染拡大でマスクなどの衛生用品やインスタント食品、洗剤といった「巣ごもり」関連商品が伸びた。19年10月の消費増税前の駆け込み需要も業績を押し上げた。

 半面、インバウンド売上はほぼ消失した。化粧品は前年実績を下回った。インバウンド対応の9店を閉店、7店舗を一時休業した。従業員らに総額30億円の“コロナ手当”を出した結果、販管費がかさんだが、これを吸収した。年間配当は167円。19円増配した。

インバウンド売上高ゼロを想定

 インバウンド売上高をゼロと想定した上で、21年5月期の業績見通しを見直すと公表していた。外国人の買い物客に人気の化粧品や医薬品のインバウンド需要が見込めないからだ。

 ツルハは外国人が多く行き交う札幌市中央区に14店、倶知安町に2店の免税店を構えていた。19年5月期のインバウンド売上高は800億円、インバウンド売上比率は10%強あった。コロナ禍で訪日外国人が店頭から消えたことから、インバウンド売上をゼロベースとして、業績を見直した。インバウンド売上の消滅は、ドラッグストア業界に共通した問題だ。ツルハがどんな数字を出すかに注目が集まった。

 21年5月期の連結決算の売上高は前期比2.3%増の8600億円、営業利益は0.4%減の452億円、純利益は3.2%減の270億円を見込む。営業利益、純利益とも減益となる。

インバウンドの落ち込みを吸収する施策

 インバウンド売上の落ち込みをどうやって吸収するのか。

 1つはPB(プライベートブランド)戦略である。グループ会社へPBの100%導入を目指す。新PBの「くらしリズム」と旧PB「エムズワン」の合算売上は、前期比7.7%増の400億円を計画している。

 2つ目は新規出店。閉店はインバウンド対応の9店舗を含む47店舗。新規出店は130店とし、期末店舗は83店の純増を考えている。

 3つ目は精肉・青果の導入。西日本地区で成果があった精肉・青果の委託販売の拡大を進めていく。委託販売だから店舗のオペレーション上の負担は少ない。来店頻度の向上、さまざまな商品を1カ所で買い求めるワンストップショッピングのニーズにも対応できる。ワンストップ需要は新型コロナ禍で顕在化した。20年5月末現在、精肉・青果の導入店は約380店だが、21年同期には270店を追加、650店規模とする。

 デジタル戦略も重要な施策のひとつだ。スマホアプリのダウンロード数は80万件にとどまっているが、7月から「花王マイレージクラブ」のポイント連携を図るなど、ダウンロードの促進策を打ち出す。インバウンド売上の落ち込みを吸収し、2021年5月期の通期の既存店売上高を0.3%増やす見込みだ。期末店舗数は2233店を計画している。

 5月28日付で子会社にしたJR九州ドラッグイレブン(福岡県大野城市)の寄与は織り込んでいない。同社は九州を基盤に206店を展開。19年2月期は売上高519億円、営業利益13億円あった。ツルハ傘下に入り、利益率の改善が期待できることから、「ツルハの連続業績の上振れ余地はある」(ドラッグストア担当のアナリスト)。

未出店の7県は自力出店にM&Aを加味

 ツルハHDの新社長に6月2日付で創業家出身の鶴羽順氏(46)が就任した。創業家への大政奉還だ。順氏は、3代目社長だった鶴羽樹・現会長(78)の次男で、ツルハHDの5代目社長となった。

 ツルハHDは同業他社を相次いで傘下に収め、18年度の売上高はドラッグストア業界のトップに立った。しかし、マツモトキヨシホールディングスとココカラファインが21年10月に経営統合し、売上高1兆円のメガドラッグが誕生する。

 ツルハは24年5月期の中期目標として店舗数3000店、売上高1兆円を掲げている。鶴羽社長は、メディアのインタビューで「大規模な経営統合の可能性も否定しない」と述べ、再編に積極的に参画する考えを示した。

 北海道発祥のツルハは全国展開を目指している。未出店地域の各県(群馬、富山、石川、福井、岐阜、三重、奈良)では自力での出店に加え、M&Aによる拡大を進めていく方針だ。

(文=編集部)

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