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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

米国政府が5兆円投資し「半導体製造」に本気を出し始めた…戦略もヤル気もない日本政府

文=湯之上隆/微細加工研究所所長
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 さらに6月25日には、やはり超党派の上院議員たちが、2つ目の法案となる“American Foundries Act of 2020 (AFA)”を提出した。CHIPS for Americaは米国国防総省をはじめとする政府機関によるプロジェクトへの資金提供を主とした法案であるが、AFAでは、米国の各州に対し、商業的な半導体製造施設の拡大を促すための助成金を提供する。各法案での資金提供額はAFAが250億米ドル、CHIPSが220億米ドルであり、その合計は470億米ドル(約5兆円)にのぼる。

 7月2日付のEE Times Japanの記事によれば、「AFAは米商務省に対して、150億米ドルの資金を提供する権限を与えることにより、州政府が、半導体工場の他、アセンブリやテスト、最先端パッケージング、最先端の研究開発を行う関連施設の建設や拡張、近代化をサポートできるようにするという」。

 CHIPS for AmericaとAFAの2つの法案が可決されれば、TSMCのアリゾナ工場建設に多大な支援が行われることになるだろう。また、TSMCがファウンドリーで半導体を製造する周辺には、各種製造装置、各種半導体材料、半導体のテストやパッケージなどのエコシステムが必要になる。2つの法案は、そのエコシステムの構築を強力に推し進めることができる。

米国と日本の本気度の違い

 前掲記事のなかで、米上院議員のJim Risch氏が「半導体産業は米国で始まったが、アジア、特に中国が半導体製造に多大な投資を行う中、米国は製造で後れを取る危険性がある」と指摘している。要するに、「中国製造2025」という政策を掲げて、半導体製造を強力に推し進めようとしている中国に大きな警戒感を持っているというわけだ。

 つまり、TSMCの半導体工場を米国に誘致し、2つの法案を提出した米国には、中国に対する危機感がある。それが、2つの法案で合計470億米ドル(約5兆円)を支援する巨額の金額にも表れている。要するに、米国の半導体製造への回帰は本気モードなのだ。

 これに対して、我が国日本はどうだろうか。

 半導体製造を支援するための法案が検討されているという話は聞こえてこない。その上、TSMCの工場誘致に対する政府の支援金は、わずか1000億円である(しかも数年間で)。桁が一つ足りないのではないか。この支援額では、TSMCが半導体工場を建設するモチベーションには到底なり得ないだろう。

 このように、米国と日本では、TSMCの半導体工場誘致に対する支援金の金額にも、本気度にも、雲泥の差がある。したがって、TSMCが日本に半導体工場をつくることはあり得ないように思う。

TSMCの地域別売上高構成比

 TSMCの半導体工場を誘致しようとする日米政府の本気度や支援額に大きな違いがあるが、TSMC側にも日本に半導体工場をつくるモチベーションが湧かない事情がある。

 図1は、TSMCの地域別四半期毎の半導体売上高構成比の推移を示したグラフである。TSMCにとって、最大のカスタマーが米国であることは一目瞭然であろう。2002~2010年までは、米国比率が70~80%を占めていた。2010年頃から中国比率が増大し始めてから、米国比率が減少したが、それでも約60%を占めている。

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