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失敗続くホリエモンロケット開発、経産省から税金「2億円」投入…将来性に疑問の声も

文=編集部
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インターステラテクノロジズ公式サイトより

 ホリエモンこと堀江貴文氏がファウンダーを務める北海道大樹町のベンチャー企業「インターステラテクノロジズ」(IST)の小型観測ロケット「MOMO(モモ)」7号機の打ち上げが26日、また延期された。エンジン点火器の異常が原因とみられるが、今月19日にも同様のトラブルが起こっていた。ISTは昨年5月4日、モモ3号機の打ち上げに成功し、国内の単独民間企業として初めて宇宙に到達したものの、それ以降、成功はない。次回の打ち上げは秋以降になる予定だ。

ロケットビジネスを影響下に収めたい経産省

 そんな宇宙に飛び立たないモモにやきもきしているのは、どうやら堀江氏だけではないらしい。経済産業省だ。同省職員は次のように語る。

「宇宙研究開発機構(JAXA)の主導で、ある意味、官需偏在でコスト意識が低い日本の宇宙開発の現状を変えるためには、民間での成功例が必要です。ISTのモモはすでに1回打ち上げに成功しており、今後も充分期待できる企業です。

 一方でJAXAもロケットビジネスへ参入を本格化させています。ご存知のようにJAXAは文部科学省の管轄です。これに対して焦っているのが本省の上層部です。

 ロケット打ち上げは日本の産業技術力の結晶ともいえる事業です。そして、そういうメイドインジャパンの高品質な商品の振興と海外への売り込みは経産省の専管事項ですからね。だから文科省の紐のついていない民間企業として、経産省はISTに期待をかけているんです」

 ISTは2015年度から、経産省の「宇宙産業技術情報基盤整備研究開発事業」の委託先となっている。ちなみに2018年度から3年間は「複数年度に亘る事業の継続を通じて単一の成果を求める必要がある」との理由で随意契約だ。

 同事業の目的は「超小型衛星の打上げ需要の増加を見据え、我が国の優れた民生部品・技術等を活用して、低コストな商業用超小型衛星打上げシステムの実現に向けたロケット用機器・部品及び民生品を適用した実用超小型衛星の研究開発・軌道上実証を実施する」ことという。現在まで、事業費の大半がJAXAとISTに委託されている。

 経済産業省の「入札結果・契約結果」の「委託契約」の一覧によると、ISTの年度別契約金額は以下の通りだ。

2015年度 1800万円

2016年度 1800万円

2017年度 1800万円

2018年度 2997万円

2019年度 5247万円

2020年度 5300万円

世界的に衛星ビジネスの民需は激減

 一連の政府による税金投入は、日本のロケットビジネスにどれだけ資するのだろうか。JAXA関係者は次のように話す。

「ゼロから始めて、計7回の打ち上げで1回成功というのは世界の宇宙開発史をみれば決して悪くない結果ではあります。ただロケット開発はトライ&エラーの多さが成果につながる分野なので、低コスト高リターンの打ち上げ事業が整備できるまでには相当の資金が必要だと思います。そういう意味で、国の支援が潤沢かというと、そうでもないと思います。

 またそもそも、ISTさんは低コストでロケットを打ち上げるのには、ハンデを抱えています。種子島に打ち上げ施設があるJAXAより、地理的に不利な状況にあるのです。現在、需要が最も多い通信・放送衛星、気象衛星などが利用する赤道上空静止軌道に向けて打ち上げるのには北海道は若干、緯度が高いです。ロケットの常識ですが、赤道上から打ち上げるのが最もエネルギーコストがかからないのです。地球の自転も活用できるため、大気圏を突破するための推力もセーブできます。

 発射場の緯度が高くなればなるほど、赤道軌道上に打ち上げるために余分なエネルギーを使い、難しい軌道制御を求められます。ISTさんにはJAXAも情報や技術を提供をしていますが、なかなか難しいと思います。経産省さんは成果を強く求めているようですが、すぐ商売にできる分野ではないと思いますよ。

 もう一つ気になるのは、世界的な通信衛星の民需の減少です。Noosphere Ventures社の2020年第1四半期のベンチャー宇宙ビジネスのレポートで、衛星運用サービスの売上額減少が報告されました。地上通信網の発達もあって、ここ数年世界的に静止軌道の通信衛星の受注は激減しています。中国やアメリカの技術開発は再び有人ロケットにシフトしつつありますし、火星探査などどちらかというと宇宙開発の潮流は再び国家プロジェクトにシフトしつつあります。

 世界的なロケットビジネスの趨勢から考えると、経産省の初動の支援が遅すぎたともいえます。ISTさんのモモが安定的に打ち上げ成功にできるようになる頃に、民需が回復していればいいのですが」

 つまり経産省はまた後手に回った可能性があるということだ。ISTも経産省も、ただロケットの打ち上げを安定させることにとどまらず、さらにその先を見通した戦略をたてる必要がある。そうでなければ世界の趨勢に取り残され、また税金をドブに捨てることになりかねない。

BusinessJournal編集部

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