片田珠美「精神科女医のたわごと」

三浦春馬さんは、母親へ愛憎交じる感情と罪悪感を抱いていたのか?「親子絶縁」の困難さ

 一連の報道によれば、三浦さんと母親はある時期まで仲が良かったらしい。これは当然だと思う。三浦さんは一人っ子だし、母親が実父と離婚して継父と再婚するまで母一人子一人の時期もあったのだから、母子のつながりが人一倍強いのは、むしろ当たり前だろう。

 にもかかわらず、何らかのきっかけで母親に怒りを覚え、憎しみさえ抱くようになったとしたら……。こんなネガティブな感情を母親に対して抱くなんて、とんでもないことだと思い、「なんて悪い子どもなんだ」と自分を責め、罪悪感を抱くのではないか。

 これは相当つらいに違いない。かつて母親に対して強い愛情を抱いていたほど、怒りも憎しみも強くなる。しかも、それに比例して罪悪感も強くなる。

愛憎一如」という仏教用語がある。愛と憎しみは「あざなえる縄」のごとく、密接に結びついているという意味であり、その意味するところは「アンビヴァレンス(ambivalence)」とほぼ同じだ。仏教と精神分析は全然違う。にもかかわらず、愛と憎しみという相反する感情を同一人物に対して抱きうることを、それぞれが別の言葉で説明したのは、このような精神状態に陥ることが程度の差はあれ誰にでもあるからだろう。

 もちろん、親に対して愛情だけを抱くほうがいいに決まっているが、人間の感情はそんなに単純ではない。むしろ、さまざまな感情が入り交じっている人が圧倒的に多い。だから、親に対して怒りや憎しみを抱いても、そのことで罪悪感を覚える必要はない。そういう感情があるのは、人間としてむしろ当たり前なのだということを知っていたら、三浦さんは追い詰められずにすんだのではないだろうか。

(文=片田珠美/精神科医)

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