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現役マネージャーが語る、芸能ニュース“裏のウラ”第28回

大炎上したナイナイ岡村の女性蔑視発言…“深夜の秘密の場所”ではなくなった現代のラジオ

芸能吉之助(現役芸能プロマネージャー)

geinou

 どうも、“X”という小さな芸能プロダクションでタレントのマネージャーをしている芸能吉之助と申します。

 マネージャー目線から見た芸能ニュースのウラ側を好き勝手にお伝えする本連載、今回は、我々、芸能マネージャーたちも頭を悩ませているアレ……「ネットニュース」と「SNS」についてお話ししたいと思います。

 最近のネットニュースって……正直どうでもいいニュースが多いですよね〜! ワイドショーやバラエティー番組でタレントが話したコメントやエピソードをそのまま文字起こししただけのような記事や、アイドルの◯◯がインスタでコーデ画像をアップして「可愛すぎます!」とフォロワーたちが大絶賛、みたいなSNSの情報をただ垂れ流しているだけの記事などなど……。「わざわざ記事にするようなこと?」と疑問に思うようなネットニュースがあふれています。

 これはもう、芸能プロ側から申し上げれば、そういう時代なんだろう、ということしか言えないですね。ネットメディアもただPVを稼ぐためだけに割り切って発信している部分もあるのでしょう。記事を書いている人も大変ですよね、きっと本人も「面白くないなー」と思いながら書いていたりするのではないでしょうか。

 とはいえ、そういう毒にも薬にもならないようなニュースだけなら、タレントをマネジメントしている僕らマネージャーとしては、話題にしてもらえるだけありがたい話。問題は、前後の文脈がわからないまま、強い言葉や行動だけを切り取って、炎上を煽るようなネットニュースです。

大炎上した、ナイナイ岡村の女性蔑視発言

 少し前になりますが、ナインティナイン岡村隆史さんがラジオ番組(4月23日深夜放送「ナインティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン」/ニッポン放送)で「コロナが終息したら、ものすごく絶対おもしろいことある。苦しい状態がずっと続きますから、美人さんがお嬢(風俗店で働く女性)やります。稼がないと苦しいですから」と発言し、「女性蔑視」「性的搾取」などと大炎上したのも記憶に新しいところ。
 
 もちろん岡村さんの発言がよくないものであったことは大前提ですが、それでも、あそこまで大炎上したのには、やはりネットニュースやSNSの影響がとても大きいと思います。
 
 爆笑問題の太田光さんが自身のラジオ番組(5月5日深夜放送「爆笑問題カーボーイ」/TBSラジオ)で岡村さんの発言について持論を述べていましたが、その中で「radikoができたり、発言がネットで取り上げられるようになったことで(深夜ラジオの)社会性が高くなった」と話していました。昔だったら一部の熱心なリスナーしか聞いてないようなラジオでの発言が、radikoでいつでも誰でも聞けるようになり、ネットニュースに取り上げられ、SNSで大拡散される。深夜、その時間に起きている人だけが聞けて、パーソナリティーの自由なトークや、深夜ラジオ特有の悪ノリなんかを共有できるような、そういう時代ではもうなくなってしまったんですね……。

“深夜のヒソヒソ話の場”ではなくなってしまった、ラジオという場

 しかし個人的には、岡村さんのラジオ番組の次の週の放送に、相方の矢部浩之さんがサプライズ登場したという“奇跡”がすごすぎて、いろんなことが吹っ飛んでしまいました。矢部さんは、岡村さんのラジオが心配でどうしようか迷っていたところ、妻である青木裕子さんの「行ってあげたら?」という一言で後押しされ、生放送に駆けつけたそうです。放送開始後、スタジオで岡村さんが先週の発言について謝罪しているところに、「お前、やってもうたな」と言いながら矢部さんが登場してきた瞬間には、ほんとシビれさせられましたね〜!

 そして、矢部さんは「本番や人前でしか謝らない」「岡村隆史を嫌いになりたくなかったから距離をとった」「(岡村さんに)逃げグセがある」「コンプレックスから女性を敵として見ている」「周りがイエスマンだけになっている」などと、公開説教ともとれる、岡村さんに対する思いを切々と吐露。岡村さんは、「ほんまそうやな」など相槌を打ちながら、じっと話を聞いていました。

 僕も長いことこの業界で働いていますが、久々に、ものすごく久々に、「芸能人の魂の言葉を聞いた……!」と思いました。“自分の本気の言葉をメディアで語る”ということを、ほとんどの芸能人がしなくなってからずいぶんたちます。これは、コンプライアンスに厳しくなっている社会の流れもあるでしょうし、あるいはもしかしたら、タレントの発言をコントロールしようとしがちな、われわれ芸能プロ側の問題でもあるのかもしれません。結果、もっと「自由に発言したい!」というタレントの欲求が、SNSやYouTubeで発信するタレントの増加につながっているのかもしれません。

 しかし、それこそ昔のラジオは、まさにそういう場だったわけです。“深夜のヒソヒソ話の場”ではなくなってからもうずいぶんたってしまった最近のラジオにおいて、矢部さんの言葉は久しぶりに、「面白い」とか「気が利いたことを言う」とかではない、自分の心の内を痛烈にさらけ出すものになっていましたね。

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大問題となった岡村隆史の失言がきっかけとなり、結果として『ナインティナインのANN』が再スタートすることに。(画像はニッポン放送内の公式ブログより)

ネットニュースやSNSは、いともたやすく芸能人の心を打ち砕く

 しかも、次の週から矢部さんは岡村さんのオールナイトニッポンのレギュラーとして戻って一緒に放送をしているんですよね。ただ仲良いとか悪いだけではない、岡村さんと矢部さんのコンビとしての絆にも、お笑い好きの私は思わずグッときちゃいましたね。

 もしこの騒動がなかったら、ナインティナインは、お互い本当の気持ちをさらけ出せないまま、終わっていたのかもしれません。きっかけは岡村さんの失言騒動ではあったけど、そこからとんでもない奇跡、心が離れていたコンビの復活劇を呼んだというミラクルが起こった。

 最近ではネットニュースとSNSによって、すぐに芸能人の発言が大炎上してしまうような風潮が見られます。岡村さんの件は、もちろん岡村さんの発言がよくなかったというのは疑いようがないのですが、ネットニュースやSNSは簡単に人の心を追い込んでしまう刃であることも、私たちは忘れてはいけないと思います。

 ただ今回に限っては、それを超えてくる奇跡が起きた。本当に実力のある芸人さんや、心のうちを誠実にさらけ出すことができる人に、周りの人やファンはついてくるんだなというのを実感しました。時々、こういう予想もつかない「ウルトラC」が起こるのが、芸能界の面白いところなんですよね。

(構成=白井月子)

芸能吉之助/芸能マネージャー

芸能吉之助/芸能マネージャー

弱小芸能プロダクション“X”の代表を務める、30代後半の現役芸能マネージャー。趣味は食べ歩きで、出没エリアは四谷・荒木町。座右の銘は「転がる石には苔が生えぬ」。

Twitter:@gei_kichinosuke

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