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しまむら、新型コロナで大幅増収…でもV字回復は困難?ユニクロとの“決定的な”違い

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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しまむらの店舗(「Wikipedia」より)

 不振に陥っていた「ファッションセンターしまむら」が、新型コロナウイルスを機に復活の兆しを見せている。6月度の既存店売上高(5月21日~6月20日)は、前年同月比27%増だった。それ以前は大幅マイナスが続いていたが、一転して大幅増収を達成した。しまむらにいったい何が起きているのか。大幅増収は本物なのか。

 しまむらの既存店売上高は、6月度より前は厳しい状況だった。3月度が12.1%減、4月度が28.1%減、5月度が23.4%減と、大幅マイナスが続いていた。新型コロナを受けた店舗の臨時休業や時短営業、外出自粛などが響いた。ただ、しまむらは郊外店が多いため、これらの影響は都市部に店舗が多い衣料品チェーンと比べると軽微といえる。しまむらは商業施設の臨時休業に合わせて、入居させている店舗の休業を余儀なくされたケースがあるが、これ以外は可能な限り営業を継続する方針をとってきた。また、郊外は都市部ほど外出自粛の影響を受けていない。こうしたことが幸いした面がある。とはいえ、大きな打撃を受けたことに変わりはない。

 しまむらも、他の衣料品チェーン同様に新型コロナ禍で苦戦を強いられたわけだが、新型コロナの影響をほとんど受けていない2月度以前も、厳しい状況が続いていた。既存店売上高は2018年2月期が3%減、19年2月期が6.8%減、20年2月期が前期比6.3%減と、3期連続で大幅マイナスが続いていた。

 このように厳しい状況が続くなか、6月度に大幅増を達成したというのは大きな意味がある。6月度が好調だったのは、休業店舗がなくなったほか、巣ごもり需要で部屋着が好調に推移し夏物衣料も売れたためだ。新型コロナ下では、部屋着のほかにマスクなどの衛生用品や、マットなどのインテリア用品が好調だったという。

 部屋着が好調だったというのは重要だ。新型コロナ下において外出を控えて自宅で過ごす人が増えているが、そういった人たちの需要を、しまむらは見事に取り込めていることの証である。また、新型コロナ下では景気悪化で節約志向が強まっているので、低価格のしまむらは節約志向の人を取り込むこともできる。

 ユニクロも同様に巣ごもり需要を捉えている。外出自粛により自宅で過ごす人が増えたことで、ユニクロが得意とするベーシックアイテムの需要が高まったという。既存店売上高も徐々に回復しており、6月は26.2%増と大きく伸びている。キャンペーンが奏功した面もあるが、しまむらと同様に巣ごもり需要を取り込めたことと低価格であることが消費者に受け入れられたことが大きいだろう。こうして、しまむらとユニクロは巣ごもり需要を捉えることに成功した。

しまむらが不振に陥った理由

 では、しまむらは、これを機にV字回復を果たすことができるのか。確かに6月度は既存店売上高を大きく伸ばすことができた。だが、これは特需の要素が強く、抜本的な対策を講じなければ、恒常的な売り上げ増は実現できないだろう。現状のままではV字回復は難しいと言わざるを得ない。

 しまむらが不振に陥った理由は、いくつか挙げられる。よく指摘されているのが、ヒット商品が少ないことと、「しまラー」ブームが落ち着いたこと、ブランド力を高めきれていないことだろう。これらについては、筆者も当サイト記事などで繰り返し主張してきたことなので、特段、異存はない。本稿では、これらとは別に、もうひとつ重要なことを指摘したい。

 それは、「注目を集めきれていない」ことだ。ユニクロなどいくつかの競合ブランドは注目を集めることに成功し続けているなか、しまむらは近年は良い面で注目を集めることができていない。それにより他の衣料品チェーンのなかに埋没してしまい、消費者の選択肢から外れてしまっているのだ。

 これは、前述したヒット商品が少ないことと、「しまラー」ブームが落ち着いたこと、ブランド力を高めきれていないことと、密接に関係している。

 まずはヒット商品が少ないことについて考えたい。しまむらは14年に「裏地あったかパンツ」を売り出してヒットさせたが、これ以外でヒット商品と呼べるものは見当たらない。ヒット商品はブランドの顔となるので、それにより注目を集めることができる。ユニクロがいい例で、フリースやヒートテック、ウルトラライトダウンといったヒット商品が存在し、今でも機能やデザインを進化させてそれを訴求することで注目を集めることができている。

 しまラーブームが落ち着いたことで注目を集めることができなくなった面もある。しまラーとはしまむらで購入した衣料品で全身をおしゃれにコーディネートする人のことだが、カリスマモデルの益若つばささんがしまむらの服でコーディネートしていることがきっかけとなり、09年ごろからしまラーブームが巻き起こった。ファッション雑誌などがこぞってしまラーを取り上げるなどしたため、しまむらに注目が集まるようになった。しかし、ブームが去ってしまラーが取り上げられることはなくなり、それに伴ってしまむらの注目度は低下していった。

 ブランド力を高めきれていないことも、注目を集めることができない要因となっている。これは、ヒット商品がないといった商品力の欠如のほか、立地戦略や情報発信の点で問題を抱えていることが大きい。立地に関しては、しまむらは都心に少なく郊外を主体としているため野暮ったい印象がついてしまっており、それがブランド力の低下につながっている。また、情報発信でブランドの世界観を伝えきれているとも言いがたい。

 この2つに関しては、ユニクロは巧者といえる。たとえば、最近では6月に都心の一等地かつ文化・流行の発信地である東京・銀座と同・原宿にそれぞれ大型の都市型店舗を出店したが、それにより「都心の一等地にも出店できるブランド」という認知を高めるとともに、ユニクロの世界観を発信することができている。ユニクロは両店を「情報発信店舗」と位置づけているが、これが奏功し、メディアに多数取り上げられ注目を集めることに成功しているのだ。

 一方、しまむらはこういったことができていない。それにより注目を集めることができずにいる。注目を集めることができなければ埋没し、消費者から選ばれなくなっていくだけだ。それを防ぐためにも、しまむらは抜本的な対策が求められている。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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