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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

オーケストラ最大の楽器「コントラバス」は移動も大変…飛行機では4席分の料金が必要に

文=篠崎靖男/指揮者

大きな楽器は、どのように運ぶのか

 ピアノは運ぶことが困難な楽器です。しかし、なかには自分の楽器をコンサートホールに運び込むピアニストもいます。たとえば、往年の名ピアニスト、ウラディミール・ホロヴィッツは、自分のコンサート・グランドピアノだけでなく、グランド・ピアノ、アップライトピアノまで、東京でのたった2回のコンサートのために米ニューヨークの自宅から運んできたことで話題になりましたが、ものすごい運搬費だったと思います。しかも、彼は妻だけでなく、お抱えの医師や料理人まで連れてきたのです。

 とはいえ、これは例外中の例外です。国内であってもピアノ運送費はかなり高額ですし、2000万円以上もする高額なコンサート・グランドピアノを所有しているピアニストも限られているので、ピアニストはホール所有のピアノを弾くことになります。しかし、ここに大きな苦労があるそうです。同じメーカーのモデルのピアノでも、かなり良し悪しがあり、それでも観客には最高のクオリティで聴かせなくてはならないからです。

 自動車、電子レンジ、スマートフォンと、当然のように同じクオリティを持った製品に囲まれている現代人にとっては信じがたいかもしれませんが、ピアノを含めて木でできた楽器はひとつずつ違う木材から手作業でつくられているので、どうしても音に微妙な差が出ますし、これがプロになると大きな差になってしまいます。

 同じ金属でできた金管楽器なら大丈夫かといえば、そうではなくて、奏者が購入する時には、同じモデルで見た目もまったく同じ楽器を10本くらい並べて吹き比べ、自分に合った楽器がなければ次の入荷を待つほどです。世界最大の楽器メーカーのヤマハであっても、今もなお音色にとって一番大切なベルは、熟練した職人が一つひとつハンマーで叩きながらつくっているのです。

 さて、ピアノは例外として、ほかのオーケストラ奏者は自分の楽器を運び、それを演奏するのが基本です。しかし、楽器ごとに大きさは異なり、なかには運搬が大変なものもあります。弦楽器を例にすると、チェロくらいから満員電車に乗るのは厳しくなってきますが、問題は飛行機移動です。高価なチェロだと荷物として預けることもできないため、チェロ用の座席のチケットも購入しなければならず、2倍の航空運賃を支払うことになります。

 もっと大変なのは、オーケストラ最大の楽器、コントラバスです。2メートル近くなるので、飛行機で運ぶためには特別なケースに入れ、高額な重量超過料金を支払わなくてはなりません。ウィーンに留学していた友人などは、飛行機の荷物庫に大事なコントラバスを放り込みたくないので、自分とコントラバスのために飛行機の座席を4席分購入して機内に持ち込んだそうです。
(文=篠崎靖男/指揮者)

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●篠﨑靖男
 桐朋学園大学卒業。1993年アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクールで最高位を受賞。その後ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクール第2位受賞。
 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後、英ロンドンに本拠を移してヨーロッパを中心に活躍。ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、BBCフィルハーモニック、ボーンマス交響楽団、フランクフルト放送交響楽団、フィンランド放送交響楽団、スウェーデン放送交響楽団など、各国の主要オーケストラを指揮。
 2007年にフィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者に就任。7年半にわたり意欲的な活動でオーケストラの目覚ましい発展に尽力し、2014年7月に勇退。
 国内でも主要なオーケストラに登場。なかでも2014年9月よりミュージック・アドバイザー、2015年9月から常任指揮者を務めた静岡交響楽団では、2018年3月に退任するまで正統的なスタイルとダイナミックな指揮で観客を魅了、「新しい静響」の発展に大きな足跡を残した。
 現在は、日本はもちろん、世界中で活躍している。ジャパン・アーツ所属
オフィシャル・ホームページ http://www.yasuoshinozaki.com/

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