20年12月期通期の業績予想は、売上高は前期比14.3%減の3兆800億円、営業利益は74.2%減の450億円、最終損益は65.6%減の430億円を見込む。経済活動の再開で事務機器は最悪期を脱し、徐々に商談が増え、需要が戻ってきているというが、「新型コロナ自体の収束のめどが立っておらず、下期の回復のペースは限定的」(田中CFO)の見方を示した。

 業績悪化を受け、6月末の配当は前年同期に比べて40円減の40円にする。6月末に配当を減らすのは円高不況に見舞われた1987年以来33年ぶりのこと。期末配当(前期は80円)は「未定」とした。株主還元に充てていた資金を事業運営や成長投資に振り向ける。高配当株の代表といわれていたキヤノン株もコロナには勝てなかった。

事務機はペーパーレス化、デジカメはスマホに押され大苦戦

 キヤノンの業績悪化は構造的要因によるものだ。コロナはダメを押したにすぎない。主力の事務機器はペーパーレス化の浸透で低迷し、デジカメもスマホの台頭で苦戦が続いている。

 カメラが祖業のキヤノンは1967年、事務機器事業に本格参入した。「右手にカメラ、左手に事務機」を経営スローガンに掲げ、経営の両輪としてきた。95年に社長になった御手洗冨士夫氏(現・会長兼社長兼最高経営責任者<CEO>)が円高などで財務が悪化したキヤノンをたて直した。

 御手洗氏は事業の「選択と集中」を実践。パソコンなど赤字事業から撤退し、プリンタ向けのインク、カートリッジなどの消耗品で稼ぐオフィス機器とデジタルカメラに経営資源を集中した。その結果、デジカメでは世界ナンバーワンになった。

 だが、10年代に入ると、事務機はペーパーレス化、デジカメはスマホ普及で縮小していく。19年、オフィス機器やデジカメ市場の縮小に合わせて約300億円をかけて構造改革を行った。だが、構造的な問題にコロナによる需要減が追い打ちをかけた。今期は販売減に伴う構造改革費用を150億円計上し、追加的な合理化策を検討している。

 10年にオランダの商業印刷オセを約1000億円、15年にスウェーデンの監視カメラメーカー、アクシスコミュニケーションズを約3300億円で買収。16年には東芝からコンピュータ断層撮影装置(CT)などの医療機器を約6600億円で買収した。だが、大型M&Aが際立った利益貢献をしておらず、デジカメや事務機の落ち込みをカバーしているとはいいがたい。

御手洗会長の社長復帰は時代に逆行

 コロナが経営に大きな影を落としている最中に、キヤノンのトップ人事が経済界を驚かせた。5月1日付で真栄田雅也社長兼COO(最高執行責任者)が退き、御手洗会長兼CEOが社長を兼務した。67歳から84歳へのトップ交代。若返りに完全に逆行した。

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