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垣田達哉「もうダマされない」

大阪・吉村知事、根拠なき「うがい薬がコロナに効く」発言で買い占め発生…一般企業なら違法

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
大阪・吉村知事、根拠なき「うがい薬がコロナに効く」発言で買い占め発生…一般企業なら違法の画像1
吉村洋文大阪府知事

 4日、大阪府の吉村洋文知事は、記者会見で「ポピドンヨードが含まれているうがい薬でうがいをすると、新型コロナウイルスの陽性者が減っていくのではないかという研究結果が出た」と述べた。さらに「ポピドンヨードによるうがいをすることによって、このコロナに、ある意味打ち勝てるんじゃないかというふうにすら思っている」と、ポピドンヨードうがい薬がコロナの特効薬のような発言もしている。

 さらに「発熱など風邪に似た症状のある方、およびその同居家族」「接待を伴う飲食店の従業員」「医療従事者や介護従事者」を対象に、「8月20日まで、集中的にぜひうがいを励行してもらいたい」とも述べた。

 この発言には、大きな問題が2つある。

 ひとつは「根拠のないものを薦めることの違法性」であり、もうひとつは結果的に「買い占めを煽る行為」になったことである。

 1つ目の違法性というのは、「知事の発言でなければ景品表示法違反に問われかねない非常に不謹慎な内容」である。消費者庁はインターネット広告において、新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうするウイルス予防商品の表示について、景品表示法(優良誤認表示)および健康増進法(食品の虚偽・ 誇大表示)の観点から緊急監視を実施した結果、3月10日以降「新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする商品の表示に関する改善要請等及び一般消費者への注意喚起について」を計4回も公表し、事業者に対する改善指導と消費者に対する注意喚起をしている。

 そのなかで消費者庁は、次のように述べている。

「新型コロナウイルスについては、その性状特性が必ずしも明らかではなく、かつ、民間施設における試験等の実施も不可能な現状において、新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうするウイルス予防商品については、現段階においては客観性及び合理性を欠くものであると考えられ、一般消費者の商品選択に著しく誤認を与えるものとして、景品表示法(優良誤認表示)及び健康増進法(食品の虚偽・誇大 表示)の規定に違反するおそれが高いものと考えられます」(※表示の具体例は文末の表参照)

 その結果、行政指導は4回合計で100事業者125商品に行われている。例えば、6月5日には次のように事業者に対して非常に厳しい態度を示している。

「インターネット広告においてウイルス予防商品を販売している 35事業者による 38 商品について、今般、一般消費者が当該商品の効果について著しく優良等であるものと誤認し、新型コロナウイルスの感染予防について誤った対応をしてしまうことを防止する観点から、当該表示を行っている事業者等に対し、改善要請等を行いました。消費者庁では、引き続き、不当表示に対する継続的な監視を実施し、法に基づく適切な措置を講じてまいります」

 今回の吉村知事の発言は「根拠(エビデンス)がない」と大阪府も認めている。景品表示法では、根拠がないものを「あたかも効果があるかのように表示をすること」は表示違反となる。これは、1個人が1研究者の実験を信じているかどうかの問題ではない。世界的に根拠がないものを「効果があるから、私を信じて買いなさい」ということで許されるものではない。

 5日になって、専門家などから疑問の声が多数あがったことで「治療薬でも予防薬でもない」とトーンダウンしたが、発熱のある人や医療従事者へは使用することを推奨している。それほど「ポビドンヨードうがい薬が、コロナに打ち勝つという自信がある」のなら、府の予算で一括購入して府民に配布すればよいのだ。それを「消費者の責任」と押し付け、購入することを推奨している。

 根拠が確立していない実験であれば「途中経過であるが、こういう実験結果が出ている」という報告にとどめるべきである。それを府民に対し購入を促すことは、法律に違反しないとしても(一般人なら当然、行政指導の案件)、行政の長としての責任は重大である。

 健康食品や健康グッズが、有名人を使って宣伝するのは、消費者に信頼があるからだ。「あの人が言っているのだから間違いないだろう」と思わせることが、商品の売り上げにつながる。いわゆる有名人商法だ。

 それが今回は、行政の長の発言である。しかも、うがい薬メーカーは、新型コロナウイルスに対する効果を標ぼうしていないどころか認めていない。まるで、米国の食品医薬品局(FDA)が「有効性が確認できない」と主張しているのに、それでも抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」が「新型コロナウイルスを撃退するのに有効だ」との見解を押し通そうとしているトランプ米大統領とダブって見えてくる。

 これが一般人なら違反になり行政指導や法律違反として摘発されるものが、同じことをしていながら行政の長であれば一切責任を問われないとすれば、法律の重大欠陥である。これが許されるならば、今後「エビデンスはないが、私は効果があると信じているから消費者の皆さん買うとお得だよ」という論法がまかり通ることになる。

「買い占めはするな」と言う一方で、うがい奨励

 もう一つ問題なのは、知事は「買い占めはするな」と言っているのに、重症化を防ぐためにも、市中感染を抑えるためにも、府民(消費者や医療従事者等)に今月20日まで、ポピドンヨードうがい薬でのうがいをすることを奨励している。

 例えば、イソジン1本50mlの場合、1日4回(1回当たり2~4ml)使用すれば、3~6日で1本がなくなる。買い占めなければ、とても長くは続けられない。当然、一度に何本も買おうとする消費者は出てくる。「ある程度在庫はある」というが、いったいどのくらいあるのだろう。もしも、大阪府民の10%が一斉に1本購入すれば、約88万本がなくなる(2020年7月1日現在、大阪府の推定人口は約882万人)。日本人の10%が1本購入すれば、瞬く間に1200万本消えてなくなるのだ。店頭在庫がすぐになくなったのは当然のことである。

 府民の命を預かる身としての焦る気持ちは、わからないわけではないが、結果として消費者に不利益を与えることになれば取り返しがつかない。責任を取って辞職すればよいというものではない。緊急時だからこそ、より冷静な対応が望まれる。

【消費者庁が改善指導した表示の具体例】

(1)健康食品

・新型コロナウイルスの予防にタンポポ茶

・あおさ、新型コロナ対策

・スピルリナ、コロナウイルス対策サプリとしても使用 できます

・ポリフェノールで新型コロナウイルス対策

・新型コロナウイルス対策!天然藁納豆にウイルスは勝 てない!納豆に含まれるペプチドは肺炎の起因菌の膜を破壊します!

・ウコンで新型コロナウイルス対策

水素水・水素サプリ、新型コロナウイルスを水素で体 内から駆逐することは可能

・新型コロナ対策、「コーヒーポリフェノール・クロロ ゲン酸」が、免疫細胞が集まっている腸内フローラを 改善、重症化を防ぐ

・新型コロナウイルス緊急対策、驚異の黒にんにくパワ ー、免疫力向上によるウイルス対策

・モズクの力、新型コロナ肺炎感染を予防、コロナウイルスを攻撃

・ワクチンも治療法もまだない中、海藻類のフコイダン が新型コロナウイルス肺炎の重症化を防ぐ

・茶カテキンでコロナ予防を!!茶カテキンの抗ウイ ルス、抗菌、抗酸化力、新型コロナにも有効

(2)マイナスイオン発生機

・新型コロナウイルスにも有効

・新型コロナウイルス対策

・新型コロナウイルスはマイナスイオンで死滅します!

(3)空間除菌剤(首下型、据え置き型)

・身に付けるだけで空間のウイルス除去・除菌

・首にかけるだけの除菌ブロッカー

・塩素成分で空間の除菌!

・インフルエンザ・新型コロナウイルス・風邪などの予防に

・新型コロナウイルス・花粉症対策!マスクに吹きかけて抗菌&除菌

(4)アロマオイル

・新型肺炎対策用ブレンド精油、体内に入り込む前に精 油を使って防御

(5)光触媒スプレー

・新型コロナウイルス対策に!光触媒/除菌・抗菌・消臭 スプレー、マスクや服に吹き付けたり、ソファーや壁、 空間に吹き付けてもOK

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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