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住宅ローン返済に窮した際に“絶対にやってはいけない”3つのこと…各種制度を知るべき

文=林美保子/フリーライター
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「Getty Images」より

 筆者は6月、新型コロナウイルスの影響で自宅を任意売却せざるを得なくなった人を取り上げたニュース番組を見て、大変なことになっていることを実感した。「その頃だとおそらく、もともと大変だった人がコロナでトドメを刺されたということだと思います」と、「NPO法人 住宅ローン問題支援ネット」の代表理事を務める高橋愛子さんは語る。

 しかし、コロナ禍さえなければ問題なく返済できていた人が破綻の危機にさらされているのが現状だ。「本当の意味でコロナの影響が出るのは、これからかもしれません。秋冬くらいが心配ですね」と、高橋さんが語っていたのは7月上旬のことだった。

住宅ローン返済の減免措置が検討されることになったが……

 ところが今月7日、日本経済新聞や時事通信などで、住宅ローン返済に苦しむ人たちにとっては朗報とも思える記事が掲載された。金融庁と全国銀行協会が新型コロナウイルスの影響で収入が激減し、生活難に陥った個人や個人事業主を対象に、住宅ローンの返済を減額・免除する特例措置をつくるという。これは、大規模な自然災害の被災者に対する債務整理指針の適用対象に、コロナ禍による経済困窮者も加えるというものだ。

 ただ、“減額・免除”という言葉だけに注目すると、ぬか喜びにもなりかねない。「住みながら住宅ローンを減免してもらえるというのは考えづらいです」と、高橋さんは語る。

「自然災害の場合は、災害で家が全壊、もしくは半壊し住めなくなってしまったのに、住宅ローンが残っているという場合の措置で、特定調停という方法で自己破産をせずに債務整理をする方法でした。たくさんの被害対象者がいるなかで、実績が498件というのは少ない。それだけ、簡単ではない手続きということだと思います」

 収入が減っても、金融機関が一時的な返済延期などで対応可能と判断すれば減免しないという。減免の程度や、住宅の売却を条件とするかどうかなどは、債務者が金融機関と個別に話し合って決めるということなので、そう甘い話ではなさそうだ。

督促を無視しない、減免申請するなど軽症のうちに対策を

「ローン返済が苦しくなったら、延命策を講じることです」と、高橋さんは語る。

「まずは金融機関に相談をすることを勧めています」

 金融庁が金融機関に向けて、住宅ローンの相談を柔軟に対応するように通達を出したことを受け、銀行では素早く対応できる態勢を整え、条件変更や返済猶予などに応じてくれているからだ。また、家計を見直して、通信費の節約、保険の見直しなど固定費を抑える工夫も必要だ。

 逆に、住宅ローンの返済に困ったときにやってはいけないことがある。これはコロナ禍に限らないのだが、滞納すること、金融機関からの連絡が来ても無視すること、カードローンやキャッシングローンから借りること、この3つだという。金融機関の相談や条件変更に応じてもらえなくなる可能性が高くなるからだ。

 実際、住宅ローンの返済に窮すると、目先のことしか見えなくなり、とりあえず急場を凌ぐためにカードローンを利用する人は少なくない。しかし、高金利であるため状況が好転するはずもなく、悪循環の泥沼にはまってしまう例も多い。

 住宅ローンやカードローンの場合には督促が厳しいこともあり、それらの対応に必死になってしまう。その一方で、税金・国民健康保険料・年金保険料といった公的な支払いを後回しにしがちだ。

「でも、しばらく放っておくと、差し押さえになります。ほかの借金と違い、税金は裁判などの手続きをしなくてもサッと差し押さえてきます。税金は怖いですよ」

 ただ、いまは税金、国民年金保険料、国民健康保険料などはコロナの影響で収入が著しく減った人に向け、臨時特例措置として一定期間の減免に応じている。これらは申請する必要があるが、他にも特例の救済措置があるのか調べてみるといいだろう。

コロナ禍が長引いてしまったら

 住宅を手放さざるを得なくなった場合、多くの売主を苦しめるのは、資産価値よりもローンの残高のほうが上回ってしまい、一般売却ができなくなるケースだ。最悪の場合には競売にかけられてしまうが、それを防ぐために、最近では任意売却という手法をとられることが増えてきた。

 任意売却とは、不動産コンサルタントが仲介に入り、債権者・債務者の調整を行うことによって、資産価値がローン残高を下回っても売却が可能になる方法のこと。売却価格がかなり安くなる競売と違って市場価格に近い価格で売却できるので、債権者・債務者ともにメリットがある。ただ、売却代金がローン残高よりも高くなることはないので借金は残る。

 場合によっては、リバースモーゲージ(自宅を担保にそこに住み続けながら融資を受けるシニア層向けのローン)や、セール&リースバック(現在所有している不動産をいったん売却して、その買主に賃料を支払い、居住を継続する仕組み)などという選択肢の可能性もあるのだが、個々人によって状況が違うために専門家の判断を仰ぐしかない。

 任意売却することに決めているのなら、直接任意売却業者に相談に行けばいいのだろうが、そこまで決めかねている場合には、住宅ローン問題支援ネットのようなNPO法人や、住宅ローンに詳しいファイナンシャルプランナーだったら、中立的な立場で相談に応じてくれるだろう。

「どの相談先も同じようなアドバイスをするとは限らないので、2~3カ所まわってみて、どこが信頼できるかを見極めたほうがいいかもしれません」と、高橋さんは語る。

 住宅ローンの減免については、まだ協議が始まったばかりで、適用条件が決まるのは少し先になりそうだ。

「たぶん金融機関からは担保物件の売却を要求されるでしょう。そのうえで、残債を特定調停で免除にするという流れになると思われます。結局債務整理と言っても話し合いで決まるので、条件は厳しいと思います」というのが、高橋さんの見方である。

 これらの動向に目を止めながらも、できるだけ早く銀行や専門家に相談するなど手を打つことで、傷を広げないで済むようにしたいものだ。

(文=林美保子/フリーライター)

林美保子/ノンフィクションライター

林美保子/ノンフィクションライター

1955年北海道出身、青山学院大学法学部卒。会社員、編集プロダクション勤務等を経て、執筆活動を開始。主に高齢者・貧困・DVなど社会問題をテーマに取り組む。著書に『ルポ 難民化する老人たち』(イースト・プレス)、『ルポ 不機嫌な老人たち』(同)、『DV後遺症に苦しむ母と子どもたち』(さくら舎)。

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