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木下隆之「クルマ激辛定食」

メルセデスが“日本で一番売れる輸入車”の理由…新型GLAから透ける巧妙なマーケティング

文=木下隆之/レーシングドライバー
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メルセデス・ベンツ「GLA」

 独メルセデス・ベンツは、「GLB」とデビューのタイミングを合わせた「GLA」でも、GLB同様に革新的なコンセプトを貫いた。メルセデスの豊富なラインナップの中にあって最小のSUV(スポーツ用多目的車)だというのに、保守的にならず、より一層SUVらしさを強調して誕生したのだ。

 初代GLAは、デビューするや否や市場で受け入れられた。Aクラスのプラットフォームを流用しながら、SUVらしく車高を上げて登場。時代がSUV色を強めていたこともあり、その流れに乗った新しい形のファミリーカーとして認知されたのだ。とはいうものの、不満の声もあった。SUVらしさが希薄だったという点だ。その反省なのか、2代目GLAはボディを大きくして生まれ変わった。

 新型GLAを眺めてまず驚かされたのは、その迫力である。エクステリアデザインテイストは、先代から大きな変化はない。細部の変化は当然のことだが、デザイナーの筆使いには違いがない。だが印象は劇的に異なる。その理由は、100mmも高くなった車高にある。

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 ドライバーの着座点は、先代に比較して140mmも高い。いかにもSUVをドライブしているがごとき視点の高さである。兄貴分のGLBより52mmも高いというのだから、その拡大ぶりには驚かされる。

 それでも、全長や全幅に大きな変化はない。肥大化によってそれまでのユーザーがそっぽを向くことを防いでいる。そのため、日本の狭い交通環境でも持て余すことがない。立体駐車場へのエントリーには気を使うことになったものの、一般的な使い方への影響は少ない。

 マーケットがSUVに傾倒していると察知するや、すかさず次に手を打ってくるところがメルセデスの強さである。長さも幅も変えずに迫力だけを強調し、乗員がその感覚を意識できるように着座点を高めた。つまり、日常の使い勝手を犠牲にせず、印象だけを巧みに操作したということになる。

 もちろん、安易な印象操作にとどまらない。導入されるのは「200d 4MATIC」のみのモノグレードだ。2リッター直列4気筒ディーゼルターボは、4輪駆動と合体される。これまでのように1.6リッターの非力なガソリンエンジンの設定はなく、FF駆動も選択できない。最高出力は150ps、最大トルク320Nm。8段デュアルクラッチと組み合わされる。低回転域の発進はモタモタする。だが、いったん動き出してしまえば推進力は強い。先代を明らかに上回る動力性能である。

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 4WDゆえに、走りの性能を好みに合わせてアジャスト可能な「ダイナミックセレクト」も装備されており、しかも、「エコ」「コンフォート」「スポーツ」に加え、道無き道を突き進む「オフロード」モードも組み込まれた。4WDクラッチがデフロックのように作用する。基本的には前後駆動トルクが50:50に変化。クロスカントリー性能が高まったのだ。

 つまり、外観の印象だけでなく、全体的なデザインテイストをそのままに、一気にコンセプトチェンジをしたのである。緻密なマーケティングと開発スピードの速さには圧倒される。

 メルセデスが日本でもっとも売れている輸入車の地位を獲得できたのは、そんなスピードにあるのだろうと想像した。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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