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木村隆志「現代放送のミカタ」

コロナ禍で医療ドラマが消える?病院ロケ不可、医療現場への配慮、感染対策とプレッシャー

文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト
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アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋 – フジテレビ」より

 振り返れば今年1~3月クールは、医療現場が舞台のドラマが6作もある過去最大の“医療ドラマ”ブームだった。もっともこれは「視聴者が望んでいた」ものではなく、各局が手堅く視聴率を獲りにいった結果であり、「正確にはテレビ業界内の医療ドラマブームだった」という感がある。

 それでもすべての作品が一定の評価を得て放送を終えた3月末、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった。これによって4~6月クールに予定されていた医療ドラマ2作、『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(フジテレビ系)、『ディア・ペイシェント~絆のカルテ~』(NHK)は放送延期。

 7月に入ってようやくスタートし、現在まで順調に放送されているが、一方で「この先、医療ドラマは減るだろう」「もしかしたらほとんどなくなるかもしれない」という不穏な声も聞こえてくる。

 その不穏な声の理由は何なのか? 掘り下げていくと、コロナ禍の中で医療ドラマの置かれた苦境と、今後の方向性が見えてくる。

コロナ禍で重くても軽くてもダメ

 基本的に医療ドラマは、千葉県などの郊外にある病院でロケを行うことが多い。しかし、コロナ禍においては、どの病院も地域の医療を支える重要な拠点。また、「院内感染を防ぐ」という観点から、多くの人が出入りするドラマ撮影を受け入れることは難しい。

 ドラマの制作サイドとしては、「せめて外観やロビーだけでも撮らせてほしい」ところなのだが、現在はたとえ早朝や深夜であってもNG。実際、『アンサング・シンデレラ』はロケを予定していた病院が使用できなくなり、お台場の湾岸スタジオ内に病院のセットをつくって撮影を行っているという。

 仮にロケを許可してくれた病院があったとしても、世間の人々はそこでドラマ撮影することを許さないだろう。批判だけで済まず、「今すぐやめろ!」と撮影現場に乗り込んで妨害する人がいるかもしれない。

 そんなプレッシャーの大きさは物語の内容にもかかわってくる。コロナ禍によって医療ドラマは、リアルに描きすぎると「重い」、ドラマチックに描きすぎると「軽い」という印象を与えてしまうなど、さじ加減が難しくなってしまった。

「この描き方では厳しい現実に立ち向かっている医療従事者に失礼ではないか?」「感謝やリスペクトが感じられる内容か?」などの配慮が求められているのだ。ちなみに『ディア・ペイシェント』の冒頭には、「この番組は2020年2月に制作を開始しました」という一文が画面上部に表示されている。つまり、その文字を表示しなければいけないほど、批判の声を恐れているのだ。

「絶対に感染者を出せない」という重圧

 そしてもう1つ制作サイドを悩ませているのが、撮影時の安全対策。もし「医療ドラマの撮影現場で感染者が出た」となれば猛批判を受ける上に、物語の説得力がなくなってしまう。スタッフもキャストも、「絶対に感染してはいけない」というプレッシャーが他ジャンルの作品よりはるかに大きいのだ。

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