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『フォートナイト』削除、エピックvsアップル対立激化は“米国vs中国”代理戦争か

文=編集部
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「Tencent腾讯」公式サイトより

 オンラインTPSゲーム『フォートナイト』を開発する米エピックゲームズと、米アップル、米グーグル両社との対立が激化している。表向きは世界的なプラットフォームを持つ2大IT企業に対し、エピックが自由競争を呼びかけて挑戦する構図だが、一連の米中対立の延長ではないかとの声も聞かれる。

 『フォートナイト』はパソコン、タブレット、スマートフォン向けに配信され、全世界3億5000万人以上のプレーヤーを抱える大人気ゲームだ。事の発端はエピックが、『フォートナイト』内のアイテム購入で、アップルの課金システムを回避する「エピック・ダイレクト・ペイメント」を導入したことだった。

 アップルやグーグルはアプリ開発者に対して、ユーザーが課金した際30%の手数料を払うよう求めている。エピックは以前から「手数料が高額すぎる」などとこのシステムに反発し、アップルやグーグルに対して引き下げなどを求めていたが、両社はこれに応じなかった。

 アップルはこの行為が規約違反であるとして、アプリ配信サービス「アップルストア」から同ゲームを削除した。これに対して、エピックは13日、スマートフォンのアプリ内課金システムなどが独占に当たるとして、アップルとグーグルをカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提訴した。一方、アップルは翌14日、アップル全製品向けのエピックの開発者用アカウントを今月28日までに終了すると通告。双方の応酬が激化している。

両者の紛争に中国テンセントの影

 ゲーム総合メディア「ファミ通」が今年1月29日に発表した『ファミ通モバイルゲーム白書2020』によると、2019年のモバイルゲーム市場は前年比103.3%の7兆1840億円。堅調に成長しつつある将来有望な巨大市場だ。ちなみに世界全体の6割を占めるアジアが4兆1016億円、北米が1兆7064億円、ヨーロッパ8757億円だった。

 この魅力的な市場を巡り、米国内ではアップル、グーグルがスマートフォン向けアプリ開発者に求める30%の手数料が、たびたび議論になってきた。それが今回、あらためて表面化したともいえる。だが、この時期に同問題が顕在化したことに対していぶかしむ声もある。ゲーム市場に詳しい経済産業省関係者は次のように話す。

「単純に米国の巨大IT企業同士の自由競争をめぐる争いならいいのですが、問題はエピックの背後に中国大手IT企業テンセント(腾讯)がいることです。テンセントはエピックの株式の40%を保有する大株主です。またテンセントは『PUBG MOBILE』や『League of Legends』など世界的なスマートフォン向けゲームの制作や運営をしていることでも知られています。この中には米国ゲームメーカーから委託されている作品も多数あります。

 日本国内でも注目を集めましたが、トランプ米大統領は6日、動画共有アプリTikTokを提供するバイトダンス(ByteDance)との取引を禁止する大統領令に署名しました。そしてこの日に、SNSアプリ微信(WeChat)を提供しているテンセントとの取引を禁止する大統領令にも署名しているのです。

 この大統領令は情報流出を防止する目的であり、ゲームなどを含まず、あくまでSNSに絞った措置ということでした。一方でこの大統領令と、エピックがアップル、グーグルに対して反旗を翻したタイミングが近接していることが、さまざまな憶測を生んでいます。つまり、『中国政府とテンセントが影響下にあるエピックを介して、一連の米国政府の対応に報復したのではないか』ということです。

 テンセントは、中国14億人の個人情報を政府が管理し、“格付け”を行う『社会信用システム』の開発事業者の一つです。しかも同社が運用する一部ゲームアプリでは、チーター(編注:不正ツールなどを使用し、ゲーム内ルールに違反するユーザー)対策として同システムを導入しています。ファーウェイ排除から始まる、米国政府と一連の中国IT企業との確執は、このシステムの存在抜きには語ることができません。

 米国政府内には『今回の提訴は全世界のモバイルゲーム市場の制覇を狙う中国による新たな挑戦』と神経をとがらせている節があるようです。トランプ政権は自国企業の持つ世界シェア防衛に関して、ひときわ先鋭的なスタンスを取っています。そのため米国内外の業界から『エピックに対する中国政府の影響が少しでも裏付けられれば、米国政府が介入してくるのでは』と危惧する声も聞かれます」

 また、ゲーム開発企業関係者は次のように心情を吐露する。

「利用規約に違反しているエピックが法廷でアップル、グーグルに勝訴することは考え難く、提訴の真意をめぐって業界ではさまざまな憶測が流れています。一般論ですが、課金プラットフォームが増え、ユーザーや開発者の選択肢が増えることは望ましいことではあるのですが……。

 エピックが開発し、全世界の企業に提供しているゲームエンジン『Unreal Engine』はスクエア・エニックスをはじめ、日本国内の多くの大手ゲームメーカーが使用しています。今後、アップル、グーグルによるエピックの排除が本格化すれば、エピックが提供している同ゲームエンジンの提供にも影響が出る可能性があります。そうなれば、日本のゲームメーカーも打撃を受ける可能性があります。

 両社が何らかの妥協点を見出してソフトランディングをしてくれることを祈っています」

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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